《移動通信システム》3G/4G/5Gの違いをスッキリ整理
Wi-Fi通信を利用できない屋外などでスマートフォンを使用時に端末画面上に「4G」とか「5G」という文字を見ることがあります。
いわゆるガラケーでは、「3G」サービスを終了といったアナウンスがキャリアより発表されました。
この「〇G」は通信方式の違いということは分かっているものの、いま一つ何が違うのかわからないという方も多いようです。そこで今回は「3G/4G/5G」の基礎知識についてご紹介します。
1.移動通信システムの流れ
一般的に「3G」「4G」「5G」と言われるものは、国際電気通信連合(ITU)が定める規格に準拠した移動通信システムの名称です。
正確には、3rd Generation Mobile Communication System(第3世代移動通信システム)、4th Generation Mobile Communication System(第4世代移動通信システム)、5th Generation Mobile Communication System(第5世代移動通信システム)と言われます。
日本市場におけるサービスの時間的な流れを以下に示します。
ではこれらのシステムを支える技術についてここに見ながら違いを検証してみたいと思います。
(1)3Gとは
ITUが定める「IMT-2000」(IMT:International Mobile Telecommunication)規格に準拠しており、3Gの最大通信速度は、64~384Kbps程度です。
通信技術としてはCDMA方式(Code Division Multiple Access:符号分割多元接続)を採用しています。
これは携帯端末ごとに疑似的な乱数で変復調することで、それぞれに異なる符号を設定して、同一周波数帯域で複数のユーザが同時に通話利用することができる仕組みです。
従来からあった多元接続方式の”TDMA”(Time Division Multiple Access:時分割多元接続)や“”FDMA”(Frequency Division Multiple Access:周波数分割多元接続)と比較して、時間や周波数など物理的な要素で分離をすることなく、見かけ上の通信容量を増大させることができます。
また符号を利用することで通信の信頼性も向上できます。
日本においては、NTTドコモやソフトバンクはW-CDMA規格を、KDDIはCDMA2000 1Xを採用しました。
(2)4Gとは
ITUが定める「IMT-Advanced」規格に準拠しています。この中には「LTE-Advanced」と「WiMAX 2」の2つの規格があり、LTE-Advancedが3GPP(Third Generation Partnership Project)で、WiMAX 2がIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)で作成されました。
4Gの最大通信速度は、110Mbps~約1Gbps程度です。
これら2つの規格の主な技術について特徴を説明したいと思います。
① LTE-Advanced
「LTE」は”Long Term Evolution”の略です。
まずこの技術を構成する要素にCA技術(Carrier Aggregation)があります。
これは、20MHz帯域のCC(Component Carrier)を複数の搬送波において同時に束ねて送信することで通信速度を向上させます。
また、複数のアンテナを使用して多重化する「MIMO」(Multiple Input Multiple Output)技術も採用されています。最大8本までのアンテナで多重化できます。
他に64QAM変調方式(Quadrature Amplitude Modulation)の利用により伝送密度を高めています。
さらに利用者の混雑を解消する技術としてCoMP(Coordinated Multi-Point)技術が使用されています。これは、隣接する基地局間が連携して、通信の安定化のためセルとセルの狭間での電波が弱まることによる不安定化への対応を行う技術です。
3Gで採用されたCDMAに対して、4Gにおいては周波数と時間で細かく区切ったチャネルを使用するOFDMA(直交周波数分割多元接続:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式も用いられています。
② WiMAX 2
WiMAX 2は、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)という無線通信技術の規格がWiMAXフォーラムとIEEE802.16が母体となって標準化を進めてきたものです。
また、WIMAX 2はLTE技術の一種でTD-LTE互換の通信回線です。(TD:Time Division)
つまり、LTEに時分割多重技術を組み合わせたものです。
利用周波数帯域として2.5GHz帯域を使用しており、さらにCA技術やMIMO技術なども採用されています。
(3)5Gとは
ITUが定める「IMT-2020」規定を満足する通信システムで、この規定は3GPPによる標準化がなされており、高速大容量、高信頼低遅延、多数同時接続に関する定義が行われています。
5Gの最大通信速度は、約10Gbps~です。
これらを支える技術としては、先ずMassive MIMO技術です。従来よりも高い周波数帯域を使用する5Gにおいては、電波をできるだけ遠くまで伝搬することやセル間の干渉を減らすことによる周波数利用効率を高める必要があります。
このためMassive MIMOは、MIMOで用いられる複数のアンテナの各アンテナ素子から送信される信号を制御して同じ位相で重なり合うようにすることで電波を強めます。利用者の方向に対して鋭い指向性のビームを生成可能となります。
次の技術として挙げられるのは、NOMA(Non Orthogonal Multiple Access 非直交性多元接続)技術です。これは4GのOFDMAからの拡張に加えて、時間・周波数・符号による電波の区別に加えて 電波の電力を制御することで電力による区別を行う技術です。
2.《6Gの時代へ》今後の展開予想
今後予想される6Gについては、2030年代に訪れるのではないかと思われます。そのために現在各社がしのぎを削って要素技術開発を進めています。その一つは多元接続技術の進化で、常に通信システムを提供するための基本技術を担っています。
また、通信速度の高速化処理をさらに進めるには、機器を含めた発熱対策が必須となります。このため半導体開発において、シリコンが新たな素材に変わるかもしれません。
周波数帯域も5Gでは高周波数帯域を利用しましたが、さらに高い周波数帯域を選択することが予想されます。このため必然的に電波の到達範囲を広げる技術がさらに求められます。
一方6Gの利用可能性を考えると、VR分野への応用、自由視点映像サービスや遠隔医療で特に手術への採用など、そのほかにロボット制御、ドローンサービス、3D映像アプリへと利用範囲が将来へ向かってさらに拡がっていくのではないでしょうか。これからの6G関連の技術開発動向に要注目です。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 T・T)