3分でわかる技術の超キホン ダニと殺ダニ剤

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虫刺され
 
ダニは、クモ網ダニ目に分類され、その種類は非常に多くて、1万種とも5万種以上いるとも言われています。
ダニは人間にとって良いイメージはないのですが、実は人間に害を及ぼすダニの割合は非常に少ないのです。
悪いのはほんの一部のダニだけなんですが、悪いダニのお話をすると…

 

衛生害虫としてのダニ

マダニ類は、マダニ亜目マダニ科に属するダニの総称で、マダニの吸血は「噛む」ことによります。この時、マダニは口下片から様々な生理的効果のある因子を含む唾液を宿主体内に分泌し、吸血を維持しています。マダニの吸血時間は極めて長く、雌成虫の場合は6~10日に達します。この間に約1mlに及ぶ大量の血液を吸血することができるのです。マダニは特に人間に害を及ぼすことから、英語ではtick、そのほかのダニはmiteと区別されています。(小さなダニをmiteという説もあります)

ツツガムシは、名前にムシついていますが、ダニの仲間で、ネズミ等に寄生し、日本では100種以上存在します。このうちアカツツガムシ、タテツツガムシなどが人間に害を与えるとされています。ツツガムシによる被害は、刺咬害のほか、ツツガムシ病を媒介します。

ヒゼンダニは皮膚に穴を掘って寄生し、時に疥癬という皮膚病を発症させます。ニキビダニ類は主に顔面の毛包に寄生しており、通常無症状であることが多いですが、体質や状況によりアレルギー性皮膚炎の原因となります。

ハウスダスト中のダニは、ヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニで、糞や死骸等がアレルギー性疾患を引き起こすアレルゲンになることがあります。ダニ密度は室内塵量に比例しているとの報告もあります。

 

ダニ媒介性感染症

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

SFTSウイルスを保有するマダニ(大型のダニの一種)に咬まれることで感染します。潜伏期間は数日~2週間程度で、発熱、消化器症状(食欲低下、吐き気 、おう 吐、下痢、腹痛など )が多く見られ、検査所見上は白血球減少、血小板減少などが認められます。重症の場合は、肝腎障害や多臓器不全をきたして死に至ることもあります。現在のところ、有効な治療薬やワクチンはありません。
 

日本紅斑熱

ケッチア・ジャポニカ(日本名:日本紅斑熱リケッチア)という病原体を保有するマダニに咬まれることで感染します。潜伏期間は、2~8日程度で、頭痛、発熱、全身倦怠感を伴って発症します。つつが虫病と同様に発熱、発しん(手足から全身に広がる)、刺し口が3大特徴で す。早期に診断し、適切な治療薬(テトラサイクリン系、重症例ではニューキノロン系の併用)を投与することにより予後は良好ですが、治療が遅れると重症化し、死に至ることもあります。
 

つつが虫病

オリエンチア・ツツガムシ(日本名:つつが虫病リケッチア)という病原体を保有するツツガムシ(小型のダニの一種)に咬まれることで感染します。潜伏期間は、5日~2週間程度で、発熱、発しん(胸、腹部、背部から全身に広がる)、ダニの刺し口が3大特徴です。 その他に全身倦怠感、食欲不振とともに頭痛、悪寒などを伴います。早期に診断し、適切な治療薬(テトラサイクリン系) を投与することにより予後は良好ですが、治療が遅れると重症化し、 死に至ることもあります。

 

農業害虫としてのダニ

ハダニ類は農作物に寄生し、植物液を吸汁することにより、植物の成長や果実に影響を与えます。ハダニ類はナミハダニ、カンザワハダニ、ミカンハダニ、リンゴハダニなどがあり、種類によって寄生する作物が若干異なりますが、ほとんどの野菜・果樹に寄生します。
ハダニは、ライフサイクルが短く、増殖が早いです。卵から成虫になるまで10日程度で、年間十数世代にもなります。雑食性で、産卵数が多いのも特徴となっています。また、突然変異率が高く、薬剤抵抗性が発達しやすいダニであるとされています。
 

ホコリダニ類

ハダニよりもさらに小さいダニで、被害が拡大するまで存在に気付かないことも多々あります。高温多湿を好むので, 被害は夏季に多発します。被害を受けた部位は, 萎縮したり変形したりします。シクラメンホコリダニとチャノホコリダニが問題になっています。
 

サビダニ類

植物の種類によって寄生するサビダニの種類が異なります。したがって、害はそれぞれ固有の症状が現れます。一般的には 葉や果実の皮がさびついたように褐色に変色し、硬くなって成長が止まるのが特徴です。
野菜に寄生するチューリップサビダニ、トマトサビダニ、カンキツ類の果実に寄生する、ミカンサビダニ、キクに寄生するキクモンサビダニなどが知られています。

 

殺ダニ剤(acaricide ,miticide)

日本は、気候的にダニによる被害が多く、ダニ剤の開発も盛んです。国産の殺ダニ剤も数多く開発販売されています。

家庭用のダニ剤としては、フェノトリン(ピレスロイド系)、メトキサジアゾン(オキサジアゾール系)、アミドフルメト(トリフルオロメタンスルホンアミド系)などが使用されています。

フェノトリンは、殺虫剤の一種で、ノミやダニの駆除などにも用いられています。

メトキサジアゾンは、アセチルコリンエステラーゼの阻害によって殺虫作用を示します。ゴキブリや、ダニ、ノミ、ナンキンムシ等への殺虫効果が期待されます。

アミドフルメトは、ダニ、特にツメダニに高い効果があるとされています。
 
農作物用として使われているダニ剤の作用としては、次のようなものがあります。

  1. 神経伝達阻害剤・・・・・・ケルセン、アカール、ダニカットなど
  2. エネルギー代謝阻害剤・・・モレスタン、ダニカット、サンマイトなど
  3. 呼吸阻害剤・・・・・・・・マイトサイジンなど
  4. 生物農薬・・・・・・・・・カブリダニ

 

ダニ剤の開発

ダニ剤開発の最大の問題点は、ダニ剤に対する薬剤抵抗性です。
早いものでは3~4年ほどで発現することもあり、製品のライフサイクルが一般に短くなりがちになってしまいます。
ダニは昆虫ではないことから、殺虫剤の多くがダニには効かず、よって、ダニ専用の薬剤が必要になります。いつの時代も新しいダニ剤が期待されています。

日本国内の農薬としてのダニ剤の市場は、それほど大きな規模ではないこともあり、農薬会社としては新規ダニ剤の開発のリスクは大きいとされています。

 

ダニ剤に関する特許・文献を検索してみると?

(※いずれも2018年11月におけるヒット件数です)

J-globeで文献調査を行うと・・・

キーワード「ダニ剤」で検索すると、1027件の文献がヒットしました。
ダニ剤に対する感受性に関する文献が多く見受けられました。

 

J-PlatPatで特許を検索してみると・・・

全文「ダニ剤」では、15361件、請求範囲に限定すると1601件ヒットしました。
殺ダニ剤組成物に関する特許が多く、FIもA01N分類が多いようです。
 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)

 

農薬など各種薬品の特許調査・文献調査サービスは日本アイアールまでお気軽にお問い合わせください。

 

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