思い込みにとらわれるべからず(技術者べからず集)
思いこみ
技術者の日常業務である、開発・設計、トラブル解決において、思い込みにとらわれないことの重要性はよく言われることです。
当たり前、とか、常識的、と考えることが盲点となって、問題の真の原因を見逃してしまうことは、しばしば起こることで、少し経験のある技術者ならば痛い目にあった経験をお持ちではないでしょうか。
なお、ここで「思い込み」とは、当たり前、常識、固定観念、先入観、偏見などと言われる、知識・概念すべてを指しています。
しかし、多くの方がその大切さを聞いていたり、実際に経験していたりしても、思い込み排除することは簡単にできることではありません。
思い込みを排除するには
技術分野に限らず全ての領域で重要なことですから、書籍やインターネット上でいろいろな方が「思い込みにとらわれない技法」を解説していますが、技術者に求められることという観点で突き詰めると
- 検討すべき要素をできる限り客観的に抽出し
- それらについての検討・考察を、できる限り論理的に行うこと
に帰着すると考えられます。
思い込み、当たり前と考える事項、固定観念、常識、といったものが、全て誤っているわけではありませんが、必ず正しいというわけでもありません。
ですから、そうした事項も含めて客観的に検討対象として取り上げ、論理的に検討考察を行う、ということになります。
しかし、本当に重要なことは、どのように実践するか、です。
そのような知識を習得することがまず必要ですが、結局は皆さんそれぞれが、そのようにして得た知識を、自ら抱える問題について適用しながら、皆さんそれぞれのやり方を確立していかなければ、能力として身についたものにはなりません。
ところで、今年のノーベル医学・生理学賞の受賞が決まった京都大学の本庶佑教授が、受賞発表後のインタビューで、「教科書も疑った」と話されています。
これは教科書が全て誤っているということではなく、「教科書でも必ず正しいとは限らない」ので、常にすべてのことに疑いの目を持ち、「何故か」と物事を考えてきた、と本庶先生が実践してきた思い込み排除方法を語られたものと理解されます。
技術者としての地力
別コラムで、「変化への対応力」の必要性についてご紹介した中で、「技術者としての地力」を強化することをお勧めしました。「技術者としての地力」の中の重要な要素に、「思い込みにとらわれない」思考・発想を行う能力も含まれると考えます。
ぜひ、日常業務を進める中の重要な課題と意識して、工夫・実践をしながら、自らの能力強化に繋げていってください。
(アイアール技術者教育研究所 S・M)