3分でわかる SRAMの構造と動作原理、DRAMとの違い

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SRAM

今回の記事では、メモリICの種類のうち「DRAM」ともよく比較される「SRAM」について説明します。
SRAMは、コンピュータや電子機器で使用される揮発性のメモリの一種です。データを読み書きするたびにリフレッシュする必要がない静的メモリで、これにより高速なアクセス速度と低消費電力が実現します。
SRAMは、キャッシュメモリや CPUレジスタなど、高速な読み書きが必要な用途によく使用されます。

1.SRAMとは

SRAM」は”Static Random Access Memory“の略です。

図1は半導体メモリの大まかな分類です。「RAM」(Random Access Memory)と呼ばれる揮発性メモリは、電源の供給がなくなると記憶内容が失われるタイプのメモリです。SRAMは揮発性メモリの一種です。

 

半導体メモリの分類
【図1 半導体メモリの分類】

 
[※関連記事:メモリ/外部記憶装置の種類(分類)と特徴をスッキリ整理! はこちら]

 

SRAMの特徴と用途

SRAMは、主に高速で低電力が必要な用途に使用されます。例えば、コンピュータのキャッシュメモリや、モバイルデバイスのディスプレイドライバなどです。

キャッシュメモリでは、SRAMの高速なアクセス速度が、頻繁にアクセスされるデータをCPUにすばやく提供するために活用されます。
「キャッシュメモリ」とは、CPUとメインメモリ(主記憶装置)の間にある記憶装置のことです。CPUはメインメモリとやり取りしながら命令を処理します。しかし、CPUに比べるとメインメモリは非常に遅いので、待ち時間が発生してしまいます。そこで使用されているのがキャッシュメモリです。キャッシュメモリはメインメモリより高速に動作するため、メモリアクセスの時間が短縮できCPU性能の向上につながります。

一方、ディスプレイドライバでは、SRAMの低電力特性が、バッテリー駆動のデバイスで画面を表示するための消費電力を削減するために役立ちます。

その他にも、通信機器や医療機器など、速度と信頼性が求められる用途にもSRAMが採用されています。

 

2.SRAMの基本構造

次にSRAMのデバイス構造を見ていきましょう。
図2に、SRAMの最も簡単な構成を示します。

 

SRAMのデバイス基本構造
【図2 SRAMのデバイス基本構造】

 

SRAMは、2つのCMOSインバーターと、データの読み出し/書き込みのための2つのMOSトランジスタから構成されます。CMOS1個に2つのトランジスタが使用されているので、計6つのMOSFETから構成されます。
6つのMOSFETを組み合わせることでデータ保持にリフレッシュが不要な「フリップフロップ回路」を構成しています。

フリップフロップは、2つのトランジスタで構成されており、入力が1であれば0を出力し、入力が0であれば1を出力します。この動作により、SRAMはデータの「1」と「0」の2つの状態を安定的に格納できます。フリップフロップの構成によりフレッシュが不要であるために、非常に高速な読み書きが可能となります。
この特性が、SRAMをキャッシュメモリやプロセッサ内のレジスタなど、極めて迅速なアクセスが求められる場面で利用される理由です。

[※関連記事:順序回路とは?フリップフロップの種類と同期の方法を学ぶ はこちら]

 

3.SRAMの動作原理

SRAMには3つの動作があります。

  1. スタンバイ:回路が何もしていない状態
  2. 読み取り:データを読み取る
  3. 書き込み:データを書き込む

 

(1)SRAMのスタンバイ動作

まず、スタンバイの動作から説明します。

 

SRAMの動作原理(スタンバイ)
【図3 SRAMの動作原理(スタンバイ)】

 

図3において、スタンバイは「左・右の論理値(1・0)を保持している状態」です。

 まず、ワード線の電圧をLow(L)にします。
⇒M5・M6のMOSFETがOFFとなり、ビット線から切り離されます。
⇒2つの交差したCMOSインバーターが1・0を保持し続けます。

 

(2)SRAMの読み取り動作

次にSRAMの読み取りの動作について説明します。

 

SRAMの動作原理(読み取り)
【図4 SRAMの動作原理(読み取り)】

 

図4の通り、左側(M1・M2)に1、右側(M3・M4)に0を保持している状態を仮定します。

SRAMの読み取りの原理は以下の通りです。

 ワード線の電位をHigh(H)にします。
⇒CMOSインバーターと接続されたM5・M6のMOSFETがON状態になります。
⇒ワード線BL1、BL2とCMOSインバーターが接続された状態になります。(青色矢印)
⇒左側のBL1は、論理値1と接続され電位上昇となります。
⇒右側のBL2は、論理値0と接続され電位下降となります。
⇒センスアンプによりビット線の電位(電圧)変化を読み取り1・0を判断します。

SRAMは論理値1・0に応じたビット線の電位変化を読み取ることで状態を判断しています。

 

(3)SRAMの書き込み動作

続いて、書き込み動作についても見てみましょう。

 

SRAMの動作原理(書き込み)
【図5 SRAMの動作原理(書き込み)】

 

書き込みは「SRAMに論理値(1・0)を書き込む動作」です。
左側(M1・M2)に1、右側(M3・M4)に0を書き込む場合を例に、書き込み原理を解説します。

 ワード線WLをHighにします。   
⇒M5・M6のMOSFETがONとなり、左右のCMOSがBL1・BL2と接続されます。(青色矢印)
⇒BL1=High(H)・BL2=Low(L)とします。
⇒左のCMOSは電位がHighのBLと接続され「1」を記録、右側は電位がLowのBLと接続され「0」を記録します。

この例とは逆に、左側に0、右側に1を書き込む場合はBL1=Low(L)・BL2=High(H)とすることになります。

 

4.SRAMとDRAMの違いは?(まとめ)

最後に、SRAMとDRAMの違いについてまとめます。
端的に説明すると、その違いは記憶の保持方法です。

まずDRAMは、記憶データを「コンデンサの電荷」として蓄えているため、情報を保持するためには、定期的に情報を読み出し、再度書き込む「リフレッシュ」という動作を実行する必要となります。

[※関連記事:3分でわかる DRAMの構造と仕組み、動作原理 はこちら]

一方のSRAMはというと、リフレッシュの動作は必要ありません。記憶部にフリップフロップ回路を用いており、そこでの電流の流れ方でデータを保持しているためです。

記憶を保持するために、変化が必要なく「静か」なメモリがSRAM、記憶を保持するために変化が必要な活「動的」なメモリがDRAMという訳です。
原理については深く理解できなくても、SRAMのSが「Static(静的)」、DRAMのDが「Dynamic(動的)」であることを覚えておけば、両者の違いはイメージしやすいことでしょう。

図6にSRAMとDRAMの比較表を示します。両者に違いを理解して使い分けることが重要です
 

比較項目

SRAM

DRAM

構造

フリップフロップ回路

コンデンサ+トランジスタ

処理速度

高速

比較的低速

容量

小容量

大容量

消費電力

少ない

多い

リフレッシュ

不要

必要

価格

高価

比較的安価

適用場面

高速処理が必要な場合
キャッシュメモリ等

大量のデータを扱う場合
主記憶装置等

【図6 SRAMとDRAMの比較表】

 

ということで今回は、知っておきたいSRAMの基礎知識を解説しました。

 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)
 
 

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