【早わかり電子回路】マルチバイブレータICの使い方《モノステーブルマルチバイブレータの例》
今回は、標準ロジックICの種類の中から、特定の機能に特化したロジックICとして「マルチバイブレータIC」をご説明します。
1.マルチバイブレータICとは
マルチバイブレータICは、1つの短いパルスから、所望の長さのパルスを作成する場合などに使用されます。
[※マルチバイブレータの解説は、「パルス発生回路とマルチバイブレータ」の回をご参照ください。]
よく使用されるICとして、1回路入りの74HC121や2回路入りでリトリガブルの74HC123などがあります。
図1は、TC74HC123AP(東芝製)というICのブロック図です。
【図1 製品名TC74HC123APのブロック図】
図1は、マルチバイブレータICの1種であるモノステーブルマルチバイブレータICの機能を示しており、このICにおいて、トリガ入力にトリガパルスが入力されると、外付けのコンデンサと抵抗により、所望のパルス幅のパルスが出力されます。
トリガ入力は、立ち下がりエッジでトリガするA(1番ピン、9番ピン)入力と、立ち上がりエッジでトリガするB(2番ピン、10番ピン)及びReset入力もトリガパルスとして使用できます。
表1に真理値表を示します。
表1において、A入力では立ち下がり、B入力とReset入力では立ち上がりの時、パルスが生成されることがわかります。また、Reset入力がLレベルの時は、リセット状態になります。Xは、どちらの入力でもよいことを示しています。
【表1 マルチバイブレータIC真理値表】
2.モノステーブルマルチバイブレータICの使い方
「モノステーブルマルチバイブレータ」は、トリガ入力にトリガパルスが入力されると、外付けの抵抗とコンデンサにより所望のパルス幅が出力されるという機能があります。
図2は、外付けの抵抗とコンデンサの接続方法を示した図です。
【図2 モノステーブルマルチバイブレータICの使い方】
図1でいうと、14番ピンがT1にあたり、15番ピンがT2となります。
トリガ入力すると、出力から所望のパルス幅のパルスを出力します。パルス幅は、抵抗とコンデンサの値で決めることができます。
図3は、図2のBにトリガパルスを入力した場合に、出力Qに出力されるパルスを示したタイムチャートです。
図3のように、出力されるパルス幅tは、t=K×C×Rで表されます。
kは定数で、ICによって異なります。TC74HC123APの場合は、K=1.0です。
例えば、C(コンデンサ)が1μFで、R(抵抗)が10kΩの場合、
t==1.0[K]×1×10-6)[F]×(10×103)[R]=10×10-3=10[ms] となります。
【図3 入出力パルス幅の変化】
このように、モノステーブルマルチバイブレータICを使用すれば、任意の長さのパルス幅tを作れます。
3.モノステーブルマルチバイブレータICの応用例
図4は、モノステーブルマルチバイブレータICの応用で、遅延した任意のパルス幅のパルスを発生させる回路の回路図です。
【図4 モノステーブルマルチバイブレータICの応用例】
図4において、1段目の入力端子Bから①のようなパルスを入力し、出力端子Qから出力された②のパルスを2段目のA端子に入力すると、今度はパルスの立ち下がりでパルスが発生するので、2段目の出力端子Qには、③のようなパルスが出力されます。
また図5は、図4の回路の①、②、③のパルス波形を示しています。
②の点では、パルスを遅延させる時間t1を決めています。③の点では、遅延時間t1後から始まるパルス幅t2のパルスが出力されている様子がわかります。
【図5 入出力パルス幅の遅延】
このようにして、遅延時間t1でパルス幅がt2のパルスを作成することができます。
モノステーブルマルチバイブレータが2回路入っている、TC74HC123APのようなICがあれば、1個のICでパルス遅延回路を作成することができます。
以上、マルチバイブレータICとして、モノステーブル(単安定)マルチバイブレータICの例を紹介しました。
他に非安定マルチバイブレータや、双安定マルチバイブレータがありますが、近年は、マイコンやCPUに置き換えられています。ただ、マイコンやCPU等を使うまでもない簡単な回路には、まだまだ需要があります。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)