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不具合未然防止の基本と実務への適用《事例で学ぶ FMEA/FTA/DRBFMの効果的な使い方》(セミナー)
2024/12/3(火)9:30~16:30
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製品の品質保証のために検査を行いますが、有効な検査システムにするためには、検査に対する理解を深めることが重要です。
今回のコラムでは、検査に関係する考え方のいくつかについて説明してみたいと思います。
目次
製品の製造における検査の種類は、検査のタイミング順に、受け入れ検査、工程内検査、工程間検査、そして出荷検査があります。
製造工程の上流で行う検査は、製造工程の下流で検査品が不良品(規格不適合品)となって、それまでの製造工数やコストが無駄となることを防ぐことができます。
一方、製造工程の下流で行う検査、例えば最下流で行う製品完成後検査は、完成品の特性を直接管理することができ、不良品の市場流出を防ぐことができますが、以下のような限界や制約を考えなければなりません。
このように出荷検査に限界や制約がある中で、確実な品質保証を行うためには、「最終製品の出荷検査」と「上流工程の確からしさの検査」の二つを効果的に組み合わせることが必要です。
それでは次に、「工程の確からしさの検査」を行うために、どのようなことを考えなければならないかを説明します。
開発段階に、QFD、(予防的)FTA、設計FMEA、工程FMEA、あるいはDRBFMなどの方法・ツールを用いて、どの最終品質特性は、どのようなメカニズムで、どの工程により形成されているかを理解して、製造上流工程での検査項目と検査数を適切に設定しなければなりません。
上述した方法・ツールは、このような目的意識をもって活用すると、具体的な不具合の予防網を作り、関係者の実践技術の向上に役立ちます。
しかし、目的意識が無いと「単なる事務的ペーパーワーク」となってしまします。
抜き取り検査の設定においては、上流工程パラメータ(変数)がどのように変化すると、下流工程でどのようなバラツキを生じるかという影響を知って設定することが重要です。
このような理解は、不具合発生時の対応時にも活躍します。
最終検査や下流工程で不良品が出た時、原因追及のための測定計画において、どの上流工程を重点的に調査すれば良いのかが分かります。これにより短時間で有効なデータの取得が可能になります。
不具合率を完全にゼロにすることが難しいケースでは、「ストレス・ストレングス・モデル」(SSM)と呼ばれて議論されているように、市場での「負荷」(stress)バラツキと製品強度(strength)バラツキのバランスに関係することが多々有ります。
このような場合には特に、製品バラツキが動く要因・原因を理解し、「中央値とバラツキの制御」を行うことが必要になります。また、中央値とバラツキの制御が行えないと、下流工程検査での不良率が突然増え、仕損費が増加し、収益が悪化します。
例えば、製品劣化特性に影響を及ぼすような、傷の存在を確認する場合には、検出しなければならない傷の大きさにより、通常の目視検査や画像解析以外に、磁気を用いた傷の探傷試験が有効な場合があります。
このように直接寸法などが検査できず、間接的な検査を活用する場合には、寸法などの許容値と間接検査のアウトプットとの相関評価と許容値設定を適切に行うことが重要になります。(磁気探傷試験の例で言えば、傷の大きさ、深さ、形状と探傷試験結果との相関評価)
直接的な検査ができない場合でも、不良品と良品における差を考え、その差により生じる差・現象を考えることで経済的で有効な検査方法を工夫・設定できます。
電気部品においては、はんだ接合部などの例で見られるように「疑似接触」と呼ばれる状態があります。
疑似接触が有った場合には、良品状態での完全な接続回路ではなくなっている箇所がありながら、通電による特性検査時には、問題なく電気が流れ、特性検査をパスしてしまい、実際の使用時に完全接触不良となり不具合を起こします。
このようなことを防止するために、出荷前に繰り返し通電による負荷を加え、疑似接触状態部があれば破損するようにして、不良品を検出して排除するという方法があります。
このような耐久テストは「スクリーニング耐久」と呼ばれますが、故障状態や進行メカニズムを正しく理解しないで試験条件を設定すると、負荷が不足していて不良品を検出できず流出させたり、負荷が過大で健全良品の寿命をただ単に短縮することとなります。
検査は目的ではなく、目的である品質保証のための手段です。
多様な検査手法に対する理解を深め、適切に選択・運用することにより、より経済的でより有効な品質保証を実現しましょう。
(アイアール技術者教育研究所 H・N)