“できない”と決めつけるべからず(技術者べからず集)
時として、よく知っているがために不可能と思い、更には決めつけていることがあります。
知っているという自信が、発想の柔軟性を阻むことに繋がります。
自分の知る解が最適解だ、あるいは設計変数を変えていってもある世界からは出られない、と思ってしまうのです。
事例1:スーパードライ
アサヒビールの生んだ名作スーパードライですが開発着手時の有名な話があります。
当時会社のトップが変わり、出された指示が「コクがあってキレのあるビールを作れ」でした。
最初の技術陣の反応は、「そんなのできるわけがない。ビールにおいてコクとキレは、トレードオフの関係(どちらかを強めるとどちらかは弱まる)にある。ビールというものを知らないから言うことだ。」というようなものでした。
事例2:部品点数半減
筆者自身も‘コストダウンのため、製品の部品点数を半減せよ’という指示を受けたことがあります。
その指示をされた方は、担当管轄製品を変わったばかりで、前の製品時代に部品点数半減を実現していました。
そのとき筆者が思ったことは「私は製品を熟知している。そんなことできる訳がない。前の製品は機能が簡単だからできただけだ。」でした。
技術者が発想を変えるためのヒント
よくあることですが、人は知らない間に、もともと手段であったものを目的だと思ってしまいます。
例えば、ある目的を達成するため、必要なことが五つあって、その一つ一つを実現するためにいくつかの方策があって、そのためにいくつかの手段があります。
この場合、実は「必要なこと」も「方策」も、もちろん「手段」もすべて大元の目的を達成するためのものです。
上流に戻って、五つの要素を考えた時に、別の要素の組み合わせで目的が達成できれば、従来必要だった方策も手段も必要が無くなる可能性も出てきます。
Out-of-box thinking(※)という言葉がありますが、技術者も自分の経験の箱から出て思索を行ってみると、より技術が楽しくなると思います。
※Out-of-box thinking : thinking that moves away in diverging directions so as to involve a variety of aspects and which sometimes lead to novel ideas and solutions
(アイアール技術者教育研究所 H・N)