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2024/12/3(火)9:30~16:30
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セメント産業は二酸化炭素(CO2)排出が多い産業とされています。
同産業からのCO2排出は2019年度で日本の総排出量の約4%を占めています1)。
世界的にみても5-6%の水準です2)。
セメントはコンクリート用素材ですから、日本でも世界でも、コンクリート使用というシステムからのCO2排出量が多いという問題を抱えていることになります。このため、コンクリートのリサイクル使用が一定量実施されてきました。このような中、CO2排出量大幅削減の可能性を秘めた次世代のコンクリートリサイクルの検討が日本で開始され、注目を集めています。
セメント生産を含むコンクリートの製造工程および従来のコンクリートリサイクル法を、図1に模式的に示します3)。
セメントの主原料は石灰石CaCO3です。石灰石に他の鉱物を加えた原料を約1450℃の高温で焼成することによりセメントとします。焼成工程で石灰石は下式のように変化し、CO2の放出(脱CO2)が起きます。
CaCO3 → CaO + CO2
即ち、焼成工程においては、a)高温焼成に必要な燃料燃焼に伴うCO2 と b)CaCO3からの脱CO2 という二重のCO2放出が起きます。a:b=4:6 の比だとされています1)。CO2排出量が多いのはこのためです。これはセメントを製造する限り避けられない現象です。
骨材に水とセメントを加えて硬化させることにより建築物用のコンクリートが形成されます。
図1上段のコンクリート製造工程は、ほぼ完成されたものです。
この工程の更なる改良によって一定のCO2排出量削減は可能なものの、大幅な削減は困難と考えられます。
建築物解体時に発生するコンクリート廃材は再利用可能ですので、現状でも一部リサイクル使用されています。
その際に、図1下段に示すように、コンクリート破砕物にセメントと水を加えてリサイクルコンクリートを形成するのが、従来の方法です。全量新品のセメントを使用する場合よりもセメント量を減らせますので、これは十分に意味のあることです。しかし、CO2排出の根源であるセメントの使用量がゼロではないという点で限界があるのも事実です。
【図1 コンクリート製造工程と従来のコンクリートリサイクル】
従来のコンクリートリサイクルの不十分な点を解消し、CO2排出量を大幅に削減する可能性を秘めていると期待されているのが、図2に示す次世代型コンクリートリサイクルなのです4)。
従来法とどこが異なっているでしょうか?
まず、リサイクル時にセメントを使用しません。
従ってこのリサイクル工程では、セメント使用で生じるCO2排出はゼロです。
【図2 次世代型コンクリートリサイクル:C4S】
では、「次世代型」では、コンクリート破砕物を結合させるために、セメントに代えて何を使用するのでしょうか?
その答えはCaCO3です。
コンクリート破砕物の隙間に、大気中のCO2を吸収させながらCaCO3層を形成させるのです。
リサイクルコンクリートの硬化時にCO2を吸収させるという画期的なアイデアです。
この次世代型コンクリートリサイクルのプロジェクトがNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のC4S研究開発プロジェクト(Calcium Carbonate Circulation System for Construction)として2020年に立ち上げられました4)。東京大学・清水建設・太平洋セメント他の8グループが参加しています。世界的にも注目されています。
まだ基礎的な段階ですが、2030年までにこの次世代型リサイクルコンクリートを用いて低層建築物を建設できることを実証し、2050年までには日本の半数のコンクリート構造物がこのコンクリートよって建設される状態となることを目指しています。今後の進展が期待されます。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)
《参考文献・サイト》