3分でわかる技術の超キホン 「コロイド」とは?

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コロイド(colloid)とは

「溶液」というと、食塩水などの分子やイオンが液体中に均一に分散したものを思い出す方が多いでしょう。
これを「真の溶液」というのに対して、「コロイド溶液」があります。
今回は、コロイドの基礎知識について簡単にご紹介します。

1.コロイド(colloid)とは?

コロイド粒子は、直径10−9mー10−7m 程度の小さい微粒子です。
コロイド粒子を分散媒に分散して、それぞれ、固体、液体と気体の組み合わせで、いろいろなコロイドになります。

その代表例の一つであるは、液体の水滴を空気の分散媒とするコロイドです。
また、牛乳は、脂肪やタンパク質を水の分散媒とするコロイドです。
牛乳のような液体中に分散した溶液を「コロイド溶液」と呼びます。

真の溶液との区別は粒子の大きさにあり、次のような大小関係となります。

 粒子の大きさ:[ 真の溶液 < コロイド溶液 < 乳濁液(懸濁液)< 濁り水 ]

コロイド粒子として分散している物質を「分散質」と言い、コロイド粒子を分散させている物質を「分散媒」と言います。
 

2.コロイドの種類・分類

コロイドは、分散媒(以後、当コラムではとします)との親和性から、親水性コロイド疎水性コロイドに分かれます。

(1)親水性コロイド

「親水性コロイド」は、コロイド粒子の分子内に親水基を多く持っており、水中でたくさんの水分子と水和しています。例えば、タンパク質やデンプンは親水基を多く持っています。

また、これらのコロイド粒子はそれぞれが同じ電荷を帯びているので、お互いに反発し合い、水溶液中で分散しています。水和した水分子も、コロイド粒子同士の接触を妨げています。

親水コロイドの表面に水分子を強く引き付けているため、多量の電解質を加えると,電離して生じた陽イオンや陰イオンにコロイドの安定化に貢献していた水を奪われ、コロイド粒子が電気的な反発力を失い、親水コロイドは不安定となり沈殿します。この現象を「塩析」といいます。豆腐のにがりなどが塩析の例です。
 

(2)疎水性コロイド

水酸化鉄のような無機物質コロイド粒子は、水に対する親和性が弱く、水に分散して「疎水性コロイド」となります。

水酸化鉄Fe(OH)3コロイドは組成式から見ると、ヒドロキシ基(-OH)があるように見えますが、実際、Fe3+イオンがコロイド粒子へ変化していくときに、Fe(OH)3は集まって、一部でOHとOHの間でH2Oがとれて結合することにより、ヒドロキシ基(-OH-)がブリッジ(水酸基の橋かけ結合)となり、Fe3+イオン同士が架橋されて微粒子になります。この微粒子は正の電荷を帯びているので、お互いに反発し合い、水溶液中で分散しています(図1)。

正電荷を持つ水酸化鉄コロイド粒子
【図1 正電荷を持つ水酸化鉄コロイド粒子】


 

また、疎水コロイドに少量の電解質を加えると、電解質が電離して生じた陽/陰イオンが疎水コロイドの表面の反対符号の電荷に引き付けられ、表面の電荷が中和されます。表面の電荷を打ち消された疎水コロイドは、電気的な反発力を失い、分散せずに固まって沈殿してしまいます。この現象を「凝析」といいます。
 

(3)コロイド粒子の構造による分類

コロイド粒子の構造によって、分子コロイド、会合コロイド(ミセルコロイド)、分散コロイド(固体粒子)などに分かれます。
 

① 分子コロイド

澱粉やタンパク質のような高分子化合物は分子が大きく、1つでコロイド粒子として存在します。
これを「分子コロイド」といいます。
 

② 会合コロイド(ミセルコロイド)

石鹸のような小分子化合物は、分子内に親水基と疎水基を持ち合わせており、水溶液中では疎水基を内側に、親水基を外側に向けるようにして、50~100分子集まってコロイド粒子をつくります(図2)。
その形成されたものを「会合コロイド」あるいは「ミセルコロイド」といいます。

石鹸のミセルコロイド
【図2 石鹸のミセルコロイド】


 

③ 分散コロイド

粘土、水酸化鉄のような水に溶けない固体がコロイド粒子の大きさになって分散したものを「分散コロイド」といいます。

 

3.コロイドの性質と関連用語

(1)透析

沸騰水に少量の塩化鉄 FeCl3 の飽和水溶液を加えると、赤褐色の水酸化鉄 Fe(OH)3 のコロイド溶液が得られます(式1)。
この場合、不純物として H や Cl が含まれます。
この混合物を半透膜に包んで純水につけておくと、H や Cl は膜を通って水中へ拡散していきますが、Fe(OH)3 のコロイド粒子だけが残ります。

このように、半透膜を利用してコロイド溶液中の不純物を除く操作を「透析」といいます。

 FeCl3 + 3H2O → Fe(OH)3 + 3HCl  ・・・(式1)

 

(2)チンダル現象

コロイド溶液にレーザー光線などの強い光を当てると、光の通路が明るく輝いて見えます。
これはコロイド粒子が大きくて、当たる光がよく散乱するからです。
この現象を「チンダル現象」といいます。
 

(3)ブラウン運動

コロイド粒子は溶液中で不規則なジグザグ運動をしています。
これは「ブラウン運動」といいます。
その原因は、熱運動をしている溶媒分子が絶えずにコロイド粒子に衝突するからです。
 

(4)電気泳動

コロイド粒子が正または負に電荷を帯びているため、コロイド粒子をU字管に入れて電圧をかけておくと、コロイド粒子は一方の電極に向かって移動していきます。
この現象を「電気泳動」といいます。

 
ということで今回は、「コロイド」について最低限押さえておきたい基礎知識を解説しました。
次回は続きとして、ゾルとゲルの違いやゾル-ゲル転位についてご説明します。
 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・L)
 

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