《メタンと地球温暖化》メタン(≒天然ガス)はCO2排出量が少ない化石燃料？地球温暖化係数は？
現在の地球温暖化問題におけるキーワードが二酸化炭素（CO2）であることは間違いありませんが、メタン（CH4）も重要な意味を持っています。
今回は、地球温暖化におけるメタンの影響を考察してみましょう。
１．メタン：二酸化炭素排出量が少ない化石燃料
天然ガスの主成分はメタンです。天然ガス≒メタンと考えてもよいでしょう。
天然ガスは石炭や石油等と同じく化石燃料です。
では、化石燃料の中で天然ガス≒メタンの特徴は何でしょうか？
図1をご覧ください。
一定量のエネルギーを生み出す際に排出されるCO2、即ちCO2排出係数を比較したものです。
石炭や石油に比べてるCO2排出係数が格段に低いことが分かります。
近年、火力発電において石炭火力が批判され、天然ガス火力への移行が進む理由はまさにこの点にあります。
【図1 化石燃料のCO2排出係数1)】
燃料としての天然ガス≒メタンを議論する際に無視できない点があります。
それは輸送時の形態です。
天然ガスはその名の通り常温で気体ですから、陸上ではパイプラインが使えます。
しかし、日本のような国が海外から輸入する際には、輸送時の体積を軽減するために液化が必要です。
則ちLNG（Liquified Natural Gas＝液化天然ガス）として輸送する必要があります。
LNGとよく似た略称にLPG（Liquified Petroleum Gas＝液化石油ガス）があります。
LPGはプロパンC3H8とブタンC4H10を液化したものであり、プロパンボンベとして流通しています。
液化ガスという点で両者は共通していますが、液化工程には大きな違いがあります。どんな違いでしょうか。
それは液化時の温度です。
LPGが常温で液化するのに対してLNGではマイナス160℃という極低温が必要になります。
これが天然ガスをLNGとして輸送する際のコスト増の要因となります。
２．メタン：地球温暖化係数が高いガス
メタンに関しては牛のゲップで大気中に排出される量が時々話題になりますが、大気中のメタン濃度はどれぐらいなのでしょうか？
図2に、CO2とメタンに関する地球全体の大気中濃度の経年変化を示します2)。
両者とも上昇傾向にあることが分かります。
注意いただきたいのは、CO2濃度の単位がppmであるのに対してメタン濃度の方はppbである点です。
単位をppmに揃えると2020年時点でCO2が約410ppmでメタンが約2ppmであり、メタンはCO2の1/200です。
では、大気中のメタン濃度はあまり気にしなくて良いのでしょうか？
【（左）図2-1地球全体のCO2の経年変化 （右）図2-2地球全体のメタンの経年変化】
「地球温暖化係数」（GWP:Global Warming Potential）という指標が話題になっています。
これは、CO2を基準にして、ほかの温室効果ガスがどれだけ温暖化する能力があるか表した数字です。
地球温暖化係数として現時点で以下の数値が報告されています3)。
- CO2 ： 1
- メタン： 25
- N2O ： 310
この地球温暖化係数25という数値を考慮すると、メタンの影響は軽視できません。
このため、これ以上の温暖化を防ぐには、重点的にメタンの排出を削減せよ との強硬な意見も出ています4)。
３．バイオガスとしてのメタン
メタンは実は身近なガスでもあります。
有機物が発酵する際に生成するありふれたガスと言えます。牛のゲップもその一例です。
これを意識的に利用し、生ごみ等の有機廃棄物の発酵処理によりメタンを生成させ、廃棄物削減と燃料回収を同時に達成するバイオガスのプロジェクトが日本各地で進行中です5)。
水には溶解せず、ガスとして容易に回収できるというメタンの特性を活かした試みです。
もちろん大気中に放散させない注意が必要です。
（日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A）
参考文献
1)https://www.j-lpgas.gr.jp/nenten/data/co2_ichiran.pdf
2)https://ds.data.jma.go.jp/ghg/kanshi/ghgp/co2_trend.html
https://ds.data.jma.go.jp/ghg/kanshi/ghgp/ch4_trend.html
3)https://www.jccca.org/faq/15950
4)https://wired.jp/2021/08/14/the-ipcc-reports-silver-lining-we-can-tackle-methane-now/
5)https://www.env.go.jp/recycle/waste/biomass/whatisbiogass.html
