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不具合未然防止の基本と実務への適用《事例で学ぶ FMEA/FTA/DRBFMの効果的な使い方》(セミナー)
2024/12/3(火)9:30~16:30
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開発時や市場での車両システムのトラブルシューティング(troubleshooting、不具合の解析・解決手法)に関連するお話をしたいと思いますが、他のシステムにも共通するポイントも多くあると思いますので参考にしていただきたいと思います。
目次
システム不具合の場合、最初は制御の不具合なのか部品の故障なのか、あるいは使用方法によるものなのかが分からない場合があります。このような時には、不具合現象が起きた現場での確認が重要になります。
一方、電子制御が導入され、システムが複雑さを増すと、現場での不具合の再現が難しくなりました。
時間や条件で多くの変数を扱い制御をしているシステムでは、稀に現象が起こるような場合には、条件を設定して不具合の再現を行うことが難しくなります。
例えば、ある制御のある処理のタイミングに、外部からあるパターンの電磁ノイズが加わって最終的に誤動作するというような場合に、エキスパートエンジニアが現場と現物を前に、ひたすら不具合現象再現を待つというのは困難です。
移動体通信システムを利用してサービスを提供することを「テレマティクス」(Telematics)と呼びます。
現在では、車両に適用され、ドライバーへ天候情報、最新詳細交通情報、そして外部サービスオペレータからのサービス提供などを可能にしています。
逆に、個々の車両の情報は運転管理に用いられたり、集積されてビッグデータとして活用されます。
このシステムでは、車両に搭載したセンサによって検知された情報を外部で解析することができます。
例えば、運転操作の安全度も解析でき、これに応じて車の保険料を変えるという適用もあります。
テレマティクスの導入は、F1で始まりました。運転状況情報と車両制御データ情報をレースコースから開発拠点に伝送し、これを解析し、コースや車両の状況に合わせてより速く走るために、車両のセッティングやドライバの運転戦略にフィードバック活用しました。
テレマティクスにより可能となる、システムの環境、システムの作動状況、そして制御とアクチェータ(作動装置)の状況を遠隔で知り、現状把握と解析を行うという技術は、遠隔での不具合の解析・解決手法、すなわちリモートトラブルシューティングにも有効です。
市場では電子制御システムに対応する様々なサービス用診断ツールが使用され、対応方法も自動的にガイドされます。一方、未経験で未想定のトラブルモードに対してはガイドできません。
しかしながら、現地でサービス診断ツールを用いて採取されたリアルタイムデータは、開発拠点に伝送され解析されることにより、トラブルの解決のために重要な役割を果たすことができます。
QCストーリーで言えば「現状把握」のステップになりますが、不具合の対応において、再現テストは非常に重要です。仮説どおりの現象が起こっているのかを再現テストにより確認しなければなりません。
再現テストが的確でなく、不具合を無理やり作っているようなものであった場合には、たとえ再現テストをベースにした評価モードで対策仕様を評価してOKになっても不具合は再発します。
電子制御システムでは、開発時の実車評価の前に、ソフトウェアプログラムや適合制御定数の確からしさを、シミュレータを用いて評価します。
開発や市場のトラブル対応時にも、開発現地や市場でのリモートデータを充分に解析し、シミュレータで適切な再現テストと対策評価を行わなければなりません。
問題解決において「三現主義」と呼ばれる、”現場・現物・現実(現象)”の三つの「現」が重要であるという考え方は、今後も変わらず必要とされるでしょう。
一方で、シミュレーションやバーチャル的(仮想的)な手法を活用することは避けられません。
三現主義とシミュレーション的な方法をつなぐものは、見える化だと思います。
バーチャル的な手法は、見える化に対しても有効活用することができます。
見える化された結果を用いて、現場・現物・現象の状態や変化の一致具合を考察する必要があります。
平均的な一致度ではなく、一致していなければいけない重要な点が一致していることを確認しなければなりません。
結局のところ、エンジニアには「最低これだけは実際の三現で実経験しなければならない」というバランス感覚と信念が求められます。(エンジニアには「原理・原則に基づく」という信念が重要ですが、三現主義に原理・原則のゲン二つが足され、「五ゲン主義」とも呼ばれます。)
これからは「リモート医療」も導入が進むと思いますが、「なりすまし医者」と「なりすまし患者」への対応が課題となるようです。実際の患者をよく知っている医者がリモート医療を活用するという姿が理想的であるように、深い製品知識と現場経験を持ったエンジニアが、ツールとしてリモートトラブルシューティングを使うという適用が望まれます。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・N)