なぜネオジム磁石は最強なのか?原理と用途をわかりやすく解説

現在実用化されている永久磁石の中で最も高性能とされているのが、日本の佐川眞人氏によって開発されたネオジム磁石です。この磁石は、従来の磁石では実現できなかった小型・高出力化を可能にし、電気自動車(EV)やHDDなど、現代の高度な電子機器を支える中核材料となっています。
本記事では、ネオジム磁石の原理・特性・用途について、基礎から分かりやすく解説します。
1.ネオジム磁石の実力
まずネオジム磁石の強さを確認してみましょう。
図1に各磁石の性能推移を示します1)。図1の縦軸は最大エネルギー積(BH)maxです。
(BH)maxは磁石の性能を示す代表的な指標であり、いわば「総合的な磁力の強さ」を表します。磁石内部に蓄えられる磁気エネルギーの最大値を示しており、限られた体積でどれだけ強い磁場を作れるかを表します。
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【図1 各磁石の最大エネルギー積(BH)maxの推移】
ネオジム磁石は1980年代に開発された比較的新しい磁石であり、他の磁石を凌ぐ高い (BH)max を有することが図1から分かります。ネオジム磁石は、ネオジム(元素記号Nd)と、鉄(Fe)と、ホウ素(B)を主成分とする磁石であり、典型的な組成はNd2Fe14Bです。重量比ではNdが約27%を占めます。
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2.ネオジム(Nd)の資源量は?
ネオジム(Nd)はそれほど知られた元素ではありません。その資源量が気になるところです。
図2に示したように、ネオジムは周期表のランタノイドに属しておりレアアースの一種であるため、資源量は決して豊富とは言えませんが、地殻中の存在量で見ると、図3のようにレアアースの中では比較的高く、卑金属の鉛を上回っています3)。ネオジムは貴重な資源ですが、すぐに枯渇してしまう状況にはありません。
ネオジム磁石は主成分のFeが非常に安価であり、Ndもまずまずの資源量があるため、原料価格面でもSm-Fe-NやSm-Coより優位性があります。

【図2 ネオジムとレアアース】

【図3 ネオジムの地殻中存在量】
3.なぜネオジム磁石は最強なのか
ではネオジム磁石が最強なのは何故なのでしょうか。
これは以下の2点から説明することができます2)。
(1)正方晶の結晶構造から生まれる最適な組み合わせ
ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、ホウ素(B)からなる正方晶構造により、磁化容易軸が強く定義され、磁化を一定方向に揃える力(磁気異方性)が非常に大きくなっています。各元素の役割は表1に示すとおりです。
【表1 ネオジム磁石の各元素の役割】
| 元素 | 役割 | |
| Fe | 磁力の源 | パワーの主役 |
| Nd | Feを一方向に固定 | 主役の能力を高める |
| B | 全体の構造を固定 | 安定化 |
(2)高い保磁力
磁石には引きつける力だけでなく、外部磁場や熱、機械的影響に対して磁化が失われにくい性質、即ち「保磁力」も重要です。ネオジム磁石では、結晶粒の周囲を、ネオジムを多く含んだ層が薄くコーティングしています。これがバリアの役割を果たし、隣の粒同士が磁力を打ち消し合うのを防いでいます。
4.ネオジム磁石の開発により実現した用途は?
ネオジム磁石はフェライトの約12倍の最大エネルギー積(BH)maxを有しますので、その分、磁力を発揮させるための体積や重量を低減する効果があります。この効果はあらゆる分野で発揮されますが、ここではその代表例として、以下の2例を示します。
(1)電気自動車(EV)用駆動モーター
フェライト磁石でEVに必要なトルクを出そうとすると、モーターが大型化し、実用的なサイズに収めることが困難になります。
- ネオジム磁石を採用することで、同出力のフェライト磁石モーターに対し、モーター重量を約50%以上削減可能です。
- 磁力が強いため、コイルに流す電流を減らすことが可能です。これにより、熱として失われるエネルギーが抑制され、システム全体の効率向上にも寄与します。
(2)HDD用のボイスコイルモーター
HDD内部でデータの読み書きを司るアクチュエーターにボイスコイルモーター(VCM)が使用されています。
1980年代のアルニコ磁石時代と比較すると、ネオジム磁石の採用によりVCMユニットの厚みは1/5以下になりました。この小型化がなければ、現在のスマートフォンや薄型ノートPCなどに収まるサイズは実現しませんでした。
5.ネオジム磁石を超える磁石の可能性?
ネオジム磁石を超える永久磁石の開発は現在も行われていますが2)、現時点ではその実現性は不透明です。
ネオジム磁石は「奇跡的材料」と評されることがあります。永久磁石に必要な要件がほぼ理想的に備わっているからです。従って、ネオジム磁石は今後も多くの産業分野において重要な役割を担い続けると考えられます。
なお、Sm-Fe-N系磁石やFeリッチ組成磁石など、ポストネオジム磁石の最新開発動向については、専門的な技術セミナーも開催されています。ご興味のある方はぜひご参加ください。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)
《引用文献、参考文献》
- 1) 以下のデータを参考に作成
・Riyajul Islam etc., Historical overview and recent advances in permanent magnet materials,Materials Today Communications 41, 110538(2024) - 2) 佐川 眞人監修, ネオジム磁石のすべて —レアアースで地球を守ろう—, アグネ技術センター (2011)
- 3) Taylor, S.R. etc., The Continental Crust: Its Composition and Evolution, Blackwell Scientific Pub. (1985)
































