【早わかり電子回路】カウンタICの仕組み(バイナリカウンタの例で解説)
今回は、以前の当連載で紹介した「標準ロジックIC」のうち、機能特化型のロジックICとしてよく使われている「カウンタIC」をご紹介します。
[※関連コラム:ロジックICの基本の解説はこちらをご参照ください]
1.カウンタICとは?
「カウンタIC」とは、デジタル回路の1種で、カウント(計数)する機能を備え、主に特定の事象の頻度を数えるために使用されるICです。
例えば、デジタルタイマー、計算機、ストップウォッチなどさまざまな機器に組み込まれています。
計数カウンタと分周カウンタ
カウンタを大きく分けると、「計数カウンタ」と「分周カウンタ」に分けられます。
「計数カウンタ」は、クロックパルス等に基づいて、内部のレジスタに格納された数値を1つずつ増やす (アップカウント) 、または減らし (ダウンカウント) 、目指す数値に達したとき、もしくは外部機器から要求があったときに計数結果を出力します。
計数結果は、BCD(2進化10進数)やバイナリコードで出力します。
「分周カウンタ」は、カウントパルスの何個かに1個または複数個のパルスを出力するカウンタです。
(※カウンタの基礎知識については、当連載の「【早わかり電子回路】カウンタ回路とは?前提となる2進数の理解から丁寧に解説」もご参照ください。)
2.バイナリカウンタの仕組み
最も基本的なカウンタICであり、2進数で数え上げることができる「バイナリカウンタ」について説明します。
Nビットのバイナリカウンタは、0から「2の N乗―1」までの数値を表現できます。
【図1 バイナリカウンタの例(TC74HC161AP)】
図1は、TC74HC161AP(東芝製)というカウンタICで、「同期式4ビットバイナリカウンタ」と呼ばれるものです。「同期式カウンタ」とは、IC内部のフリップフロップ回路が、共通のクロックパルスをトリガにして同時に応答するカウンタICです。
TC74HC161APは、4ビットなので、0000 から 1111(0~15)までカウントできます。
また、任意の初期値を設定(プリセット)してその値からカウントアップすることが可能です。
表1に各ピンの機能を示します。
ピン名 | 機能 |
QA~QD | カウンタの出力 |
DA~DD | プリセット用の入力 |
CK(クロック) | クロック入力 |
LOAD | プリセットを行うための端子。この端子をLにしてクロックが立ちあがったとき、初期値の設定が行われる。 |
CLR(クリア) | CLR=Lでカウンタは 0000 になる。クロックに関係なく直接クリアが行われる。(非同期クリア) |
ENABLE P ENABLE T |
カウンタをカウント/ストップさせる端子 P=1、T=1でカウンタはカウント動作を行う。 |
RIPPLE CARRY OUTPUT(CO) | このカウンタの4桁がすべて『1』であることを示す |
【表1 TC74HC161APの各ピンの機能】
表2に真理値表を示します。
【表2 TC74HC161APの真理値表】
表2に示されるように、CLRをLレベルにすると、出力は全てLレベル、すなわちリセットになります。
CLRをHレベルにして、LOADをLレベルにすると、カウンタは、入力のDA、DB、DC、DDに設定された論理レベルを読み込み、プリセット状態になります。
ここで、LOADがHレベル、ENPとENTがHレベルになると、クロックの立ち上がりで、プリセットの次の数からカウントします。
図2にタイムチャートを示します。
【図2 TC74HC161APのタイムチャート】
図2では、プリセットされた「12」からカウント動作が始まり、「15」までカウントされたら、「0」に戻って再カウントされています。
3.カウンタICの応用(12進カウンタの例)
カウンタICの応用例として、12進カウンタを考えてみます。
図3は、TC74HC161APを用いて12進カウンタを作成したときの概略図です。
【図3 カウンタICの応用例】
図3では、カウンタICとNANDゲートを組み合わせて、カウンタで「11」を検出し、出力をLOAD端子に入力し、つぎのクロックで0をセットしています。
これにより、0から11までカウントすることになります。
【図4 端子のタイミングを示すタイムチャート】
図4は、図3のそれぞれの端子のタイミングを示すタイムチャートです。
図4より、「11」を検出し、LOADに入力すると、次のクロックの立ち上がりで、0000 がセットされることがわかります。このように、n進カウンタは、「n-1を検出し、次のクロックで0をセットする。」という形で作成することができます。
ということで今回は、様々な用途で使用できる「カウンタIC」の基礎知識を解説しました。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)