締め付けトルク、軸力、そして角度締め

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ねじを固定する際の軸力と角度締め
 

部品と部品をネジ部により締結する場合、又は部品をボルトにより他の部品に固定する場合には、トルクをかけ部品又はボルトを回転させて締め付けますが、この時、部品と部品とを分離しないように押さえている軸方向の力を「軸力」と呼びます
一方、組立製造工程において、部品あるいはボルトが正しく組付けられているかを管理する方法として、締め付けトルク管理と締め付け角度管理があります。角度管理による締め付けを‘角度締め’と呼びます。

 

軸力の設定と摩擦

締結部の設計では、分離させようと働く外力に対して耐えられるように設計しなければなりません。ボルトでの締め付け部で言えば、ボルトを緩める軸方向外力Fに対して軸力F2で締め付け状態を保持します。F2>F1で緩みが無くなりますが、軸力の設定としては安全率をαとし、F3=αxF2とします。

計算上、締め付けトルクT3と締め付け軸力F3は, 単純な換算となりますが、一方、実際の締め付けや緩みにおいて重要になるのは、ネジ部や座面の摩擦です。締め付け回転時に、ネジ部や座面の摩擦が、想定よりも大きければ、設定以上のトルクが必要となり、一方緩め回転時に、ネジ部や座面の摩擦が想定よりも低ければ、設定以下のトルクで緩むことになります。別の言い方をすると、同一締め付けトルクでも軸力が異なるということは、規定トルクで締めてあっても想定以下の負荷で緩むことを意味します

 

締め付けトルク管理と締め付け角度管理

分離への抵抗力はあくまでも軸力ですから、組立製造における品質管理において重要なのは、軸力の保証です。
摩擦が安定管理できている、そのバラツキ影響度が低い、そして軸力との充分な相関がある、などの保証がある場合には、締め付けトルクでの管理が適用できます。

軸力管理には、二つの方法が有ります。
一つは軸力を測定することによるものですが、もう一つは角度締めです。

角度締めでは締め付け工程において、締め付け(回転)角度を基準値として用います。
同時に複数の角度(回転)位置で、その時の締め付けトルクが、ある範囲(ウインドウ)に入っているか確認します。
締め付け角度とトルクの相関が、想定範囲に管理できていれば、摩擦も正しく管理できていることになります。これはすなわち軸力が正しく管理できていることを意味します。

角度締めにおいて、より軸力のバラツキをなくし、かつ大きい軸力を得られる方法として、‘塑性域角度締め’があります。この方法では、最初にボルトをネジの降伏点まで締め、その後規定角度まで締め付けます。ただ塑性変形を伴うため、ボルトを同じ方法で再使用することはできません。

 

潤滑剤とロック剤

ネジ部の摩擦は、粗さなどの仕上げ状態や、切り粉などの侵入などにも影響を受ける不安定なものです。
一方、ネジを締めやすくするために潤滑剤や低摩擦コーティング剤を用いたり、逆に締め付け後に緩みにくくするために、ネジに塗布し締め付け後固化するロック剤(緩み止め剤)を使用することがあります。
これらの場合には、正しい軸力管理を行うために、より注意することが必要です。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・N)

 

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