3分でわかる技術の超キホン 「半導体」最低限の前提知識、まずはコレだけ(エネルギーバンド/半導体の分類)
今回のコラムでは、最低限これだけは知っておきたい「半導体」の必須前提知識について解説します。
目次
1.エネルギーバンドについて
半導体も含め、物質は原子からできています。
図1のように、原子は中心に原子核が存在し、その周りを回るいくつかの電子で構成されています。
電子は原子核からの距離に比例したエネルギーを持っており、決められた軌道しか回ることができません。
この軌道を「エネルギー準位」と呼びます。
[図1 原子の構造]
原子を構成している電子は、物質の種類により決まっているエネルギー準位にしか存在できません。
原子同士が集まって固体になるとそのエネルギー準位は幅を持ち、「エネルギーバンド」となります。
図2に導体、半導体、絶縁体のエネルギー構造を示します。
[図2 導体、半導体、絶縁体のエネルギー構造]
価電子帯/伝導帯/禁制帯(エネルギーギャップ)
物質のエネルギーは低い状態の方が安定するため、電子はエネルギーの低い領域から満たされていきます。
導体においては、低いエネルギー帯から電子が満たされていきますが、周囲よりもエネルギーが高い電子は、自由に移動できるため電流が流れることになります。
半導体と絶縁体においては、「価電子帯」と呼ばれるエネルギーの低い領域に電子が満たされています。
エネルギーの高い「伝導帯」と呼ばれる領域には、電子が存在しません。
価電子帯と伝導帯の間には「禁制帯」(エネルギーギャップ)と呼ばれる電子が存在できない領域があります。半導体と絶縁体はエネルギーギャップがあるために、電流が流れません。
ところが、半導体のエネルギーギャップは絶縁体に比べると小さいので、外部から半導体にエネルギーギャップ以上のエネルギーを与えることで、価電子帯の電子は伝導帯に持ち上げることができます。
このように半導体には自由電子を生じさせて導電性を持たせることができます。
正孔とキャリア
半導体において、電子が励起されると価電子帯には電子の抜け穴が残ります。
この穴を「正孔」(hole)と呼びます。
正孔は正の電荷をもった粒子のように振る舞います。
伝導帯に励起した電子や正孔は、半導体中で電気を運ぶので「キャリア」(carrier)と呼ばれます。
2.元素半導体、化合物半導体、混晶半導体
半導体は、材料により「元素半導体」、「化合物半導体」、「混晶半導体」に分類されます。
元素半導体
「元素半導体」は、単一の元素から成る半導体です。
例えばⅣ族元素のシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)の単結晶が挙げられます。
(ローマ数字は元素の短周期型周期表の族を表しています。)
化合物半導体
「化合物半導体」は、2 つ以上の原子がイオン結合により結合してできる半導体です。
化合物半導体には、Ⅲ-Ⅴ族のGaAs、Ⅳ-Ⅳ族のSiGeがあります。
混晶半導体
「混晶半導体」は、多元系の材料から構成される半導体です。
化合物半導体を組み合わせることにより、複数の元素から成る半導体を作ることができます。
例えば、InGaAsPを材料にした混晶半導体等があります。
混晶半導体では、元素の組成比を変化させることで、エネルギーギャップを連続的に制御することも可能になります。
3.真性半導体と不純物半導体
また、半導体には「真性半導体」と「不純物半導体」とがあります。
真性半導体
「真性半導体」は、高純度の半導体で、例えばⅣ族元素のシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)の単結晶が挙げられます。
不純物半導体(P型半導体/N型半導体)
「不純物半導体」は、Ⅳ族元素に対して低濃度の不純物を添加(ドーピング)した半導体です。
添加する不純物(ドーパント)には、Ⅲ族元素やⅤ族元素が使われます。
GaAsなどのⅢ-V族の化合物半導体に対して2価の元素(例えば亜鉛)をドーピングすることもあります。
不純物をドーピングすると、電子が存在できないバンドギャップの中に新しいエネルギー準位が生じて電気伝導度が高くなります。
ドーパントの種類により、電子を余分に持つ「N型半導体」と、電子が足りない(正孔を持つ)「P型半導体」があります。
次回は、そのP型半導体とN型半導体、そして「pn接合」について解説します。
(日本アイアール株式会社 N・S)