熱硬化性樹脂複合材料 (GFRP&CFRP)の基礎とリサイクル技術
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軽量化技術の要である繊維強化プラスチック(FRP)、特に材料関係(中間基材)を中心に説明します。
目次
複合材料(Composite Material:コンポジット)とは、異なる2種類以上の素材を組み合わせることで、個々の材料では持ちえない強度・剛性・靱性などの特性を示す材料の総称です。
複合材料は、母材(別名matrix:マトリクス)に強化材を加えることで、単一材料では発揮できない特性が得られます。
【図1 複合材料の定義】
複合材料は、強化材の形態により「粒子分散強化」と「繊維強化」とに分類されます。
また、母材の種類によって「金属基」、「セラミックス基」、「高分子(ポリマー)基」に分けられます。
強化材の形態が「繊維強化」であり、母材が「高分子(ポリマー)基」つまりプラスチック(樹脂)を使用した複合材料が「繊維強化プラスチック」(FRP: Fiber Reinforced Plastics)です。
繊維強化プラスチック(FRP)は、複合材料の中で最も多く利用されている材料であり、今回のコラムではFRPを中心に説明します。
なお、強化材の形態が「繊維強化」であり、母材が「金属」の場合は「繊維強化金属」(FRM)と呼ばれ、FRPとは異なる性質を持ちます。
強化材として使われる繊維の種類によって、以下のように区分されます。
母材として使用するプラスチック(樹脂)は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂に大きく分かれます。
具体的な樹脂の例は以下です。
複合材料である繊維強化プラスチック(FRP)は、繊維だけでは、布のように曲がってしまい構造体としての強度がでません。そこで、繊維と母材(樹脂)を成形することで繊維の強度を引き出せます。そのためには、成形前に材料(中間基材)を準備する必要があります。
中間基材は、素材を加工したものですが、最終形態ではなく、中間基材を成形することにより繊維強化プラスチック(FRP)となります。中間基材には、あらかじめ樹脂を含侵させたタイプ(プリプレグ、ペレット、SMC基材)と、成形時に樹脂を加えるタイプ(ドライ繊維)の2種類があり、成形方法に応じた中間基材が必要になります。
それぞれの中間基材について、以下に説明します。
「プリプレグ」とは、”Pre-Impregnated”、つまり「前もって含浸されたもの」という意味です。
連続繊維のシートや織物などの基材に、樹脂をあらかじめ含浸させた基材です。
連続繊維に熱硬化性樹脂を含侵させたプリプレグが広く使用されています。広く使用されている理由は、樹脂が未硬化時に低粘度のため、繊維に含侵しやすいためです。
樹脂を加熱加圧して繊維にしみ込ませる「ホットメルト法」が広く使用されています。しかし、熱硬化性樹脂のため保管時に硬化が進んでしまい劣化する恐れがあり、冷凍倉庫での保管が必要になります。主に、オートクレーブ成形、プレス成形などで使用されます。
【図2 連続繊維に熱硬化性樹脂を含侵したプリプレグ製造(ホットメルト法)】
連続繊維に熱可塑性樹脂を含侵させたプリプレグが開発されています。
熱可塑性樹脂を含侵させた中間基材は常温でも保存可能で管理が容易で、リサイクル化の観点でも熱可塑性樹脂を使用したほうが有利となります。主にプレス成形などに使用されます。ただし、溶融粘度の高い熱可塑性樹脂を繊維に含侵させた中間基材を製造するのは難しく、高い圧力と時間を要します。
近年開発された「ダブルベルトプレス」(DBP)は、2本のスチールベルト間に繊維と樹脂の基材を挟んで、加圧しながら加熱・冷却工程を通過させることで、熱可塑性プレプラグを連続的に製造できる装置です。
【図3 連続繊維に熱可塑性樹脂を含侵したプリプレグ製造(ダブルベルトプレス法)】
SMC基材とは、不連続繊維(短繊維)と熱硬化性樹脂、離型剤、増粘剤等を混錬し、シートまたはバルク状に成形し取り扱い性を良好にした材料です。主にSMC成形、プレス成形に用いられます。
熱可塑性樹脂と不連続繊維(短繊維)を混錬しペレット状にしたもので、射出成形法による成形に使用されます。強度発現に有効な長繊維を混錬した長繊維ペレットも開発されています。
ドライファブリックは、樹脂の含侵が行われていない炭素繊維の布のことです。
また、その布を目的形状に近い形状に予備的に成形したものを「プリフォーム」と呼び、これらは「RTM」(Resin Transfer Molding)という型による成形に用いられます。
ドライ繊維を使用した成形は、成形時に樹脂を加え含浸する方式です。
各種材料の比強度(引張強さ/密度)および比剛性(弾性率/密度)の関係を図4に示します。
複合材料の中でもCFRP(炭素繊維強化プラスチック)、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)などのFRPは両者を兼ね備えた特性を持つ材料であることがわかります。
【図4 各種材料における比剛性、比強度の関係 ※引用1)】
FRRは、比強度、比剛性などの力学的性質が優れてだけでなく、複雑な曲面形状への成形が容易であることや腐食を生じないことなど好ましい性質を有します。
FRPの中でもCFRPは、図5に示すように比強度・比剛性が高く、成形性、コストなどの面で総合的に優位な炭素繊維を用いたCFRPが主流となっています。
【図5 繊維強化プラスチックと繊維強化金属の比較 ※引用2)】
※赤い丸枠は筆者追加
母材は樹脂でなくとも、繊維と接合性の良い金属のほうが良いと思われがちですが、金属は比重が大きいので、繊維強化材は軽いという特性を活かせません。上記図5に示すように、比強度・比剛性とも繊維強化金属より、繊維強化プラスチックのほうが優位と言えます。
以上、今回は繊維強化プラスチック(FRP)の材料面に関する基礎知識を解説しました。
次回は、FRPの具体的な成形方法についてご紹介します。
(アイアール技術者教育研究所 T・I)
≪引用文献、参考文献≫