3分でわかる技術の超キホン “NFC”と“Bluetooth”の違いは?知っておきたい近距離無線通信規格
目次
1.近距離無線通信と規格
今回は”NFC”(Near Field Communication)と”Bluetooth”(ブルートゥース)という近距離無線通信の無線通信規格についてお話したいと思います。
これらの名前はスマートフォンなどの普及でご存じの方も多いかと思います。
どちらも比較的に短い距離で無線による相互通信を行うことを意味します。
日頃の生活の中で交通系ICカードの利用、「nanaco」「Edy」などの電子マネーでの支払いや、ワイヤレスイヤホン・ワイヤレスヘッドホンなどとスマートフォン間で接続利用されるケース、またパソコン用ワイヤレスマウス/ワイヤレスキーボードなどでの利用など生活の上ですでになじみ深くなっている技術です。
では、”NFC”と”Bluetooth”の特徴や用途、両者の違いについて確認してみましょう。
2.NFCとは?
この話に入る前に皆さんは”RFID”という言葉をお聞きになったことがありますか?
RFIDとは”Radio Frequency IDentifier”の略で、電波を利用してID(識別情報)などの情報をRFタグとリーダ/ライター間で読み書きを行う近距離無線通信(数cm~数十mくらい)です。
RFタグには、バッテリーを内蔵する「アクティブタイプ」と、バッテリーを有しない「パッシブタイプ」がありますが、一般的パッシブタイプが多く利用されているため上図ではパッシブタイプのRFタグを示します。
RFタグは、ICタグ、電子タグ、無線タグなどとも言われます。
電波の使用周波数帯域は、LF帯(中波帯)、HF帯(短波帯)、UHF帯(極超短波帯)、マイクロ波帯が国内では使用されますが、その中でも短波帯(3MHz~30MHz)やUHF帯(300MHz~3GHz)などが主に利用されます。
動作は簡単に言えば、リーダ/ライターからの電波によりRFタグ内に起電力が発生され、この起電力を利用してRAMへリーダ/ライターから受信した情報の書込みを行い、またリーダ/ライターからのデータ要求の受信によりRFタグはRAMから情報を読出してリーダ/ライターへ返送することを行います。
RFタグの形状は、コイン型、円筒型、ラベル型、カード型などがあります。
このようなRFIDの技術をバックにNFCというものが生まれました。
NFCとは国際標準規格の無線通信技術であり、このRFIDの技術に属する通信規格です。
国際標準規格となったため国内を問わず海外でも、リーダ/ライターに一度RFタグを近づけるだけでRFタグ内の個体の識別情報(ID)を読取るができ、また識別情報は新たなデータに書き換え可能になります。
NFCの4つのタイプ
では規格について以下に示します。規格は大きく以下のように4つに大別されます。
カードタイプとしては、TYPE-A、TYPE-B、TYPE-Fの3タイプがあります。
これらは、すべて短波帯13.56MHzの周波数を使用しています。
TYPE-AとTYPE-Bは、ISO/IEC14443という非接触ICカードの国際標準規格であり、TYPE-Fは通信プロトコルの国際規格としてISO/IEC18092を取得しています。
《 TYPE-A 》
欧州を中心にオランダのフィリップスが提案した標準規格で”MIFARE“とも言われ、世界に最も普及しているICカードです。
《 TYPE-B 》
米国を中心にモトローラが提案した標準規格で普及しています。
《 TYPE-F 》
ソニーが提案した技術で、日本において特にSUICAなどの交通系ICカードとして普及しています。
またNFCフォーラムという業界団体が、フィリップス(現在のNXPセミコンダクターズ)、ノキア、ソニーにより2004年に設立され、NFCの相互接続のための使用の策定や認証作業などを行っています。
《 RFIDタグ 》
非接触ICカードの国際標準規格で周波数も13.56MHzとTYPE-A,TYPE-Bと同じですが、主に物流用途のICタグ/ICラベルなどとして使用されます。
3.Bluetoothとは?
Bluetoothは、NFCと同様に近距離で繋ぐ無線通信規格(IEEE802.15.1)ですが、エリクソンをはじめ欧米企業により策定されたものです。使用周波数帯域は短波帯の2.4GHzを使用します。
通信可能な距離は出力パワーにより3段階のクラスに分けられ数m~100m程度とNFCと比較してやや距離が広がります。したがって、どちらかといえばWi-Fiなどの無線LANと対比されることが多いようです。
Wi-Fiの1対Nに対してそれとは異なり1対1の通信であり、また通信速度(最大24Mbps)は遅いです。
ただし到達距離は短くなりますが消費電力を抑えることができます。(出力1mW~100mW)
最近のBluetoothの技術の利用例では、スマートフォンとカメラの接続によるスマートフォンでのカメラ内の画像閲覧や、スマートフォンとプリンタ間での印刷、プリンタのエラー表示などをスマートフォン表示するなどに利用されています。またテレビとスピーカー接続などの例もあります。
Bluetoothとペアリング
Bluetoothでの接続はNFCのようなワンタッチの簡単接続に対して、「ペアリング」という方法で接続相手の設定を行います。
一度ペアリングが確立したデバイスは電源が一旦切断し、再度立ち上げた場合も自動で接続が可能です。
このため、スマートフォンのイヤホン・ヘッドホンやPCのマウス・キーボードなどの接続用途に使用されています。
Bluetoothの進化(バージョンアップ)
またBluetoothは、仕様のバージョン1.0が1999年に発表されて以来、2019年のバージョン5.1の発表までバージョンアップの発表が行われています。
この中で2009年にバージョン4.0が発表されこの中に、BLE(Bluetooth Low Energy)の省電力化の提案がなされました。
これは、デバイスがボタン電池一つで数年間駆動でき、転送速度は1Mbpsに抑えられた仕様です。
主な用途としては、BLEタグとして例えば鍵やカバンなど大切なものに取り付けて、スマートフォンなどと連携して置き忘れ防止などとして利用したりしています。BLEタグは、いわばRFIDをBluetoothに置き換えたものです。
昨今はBluetoothタグに電池不要でRFIDのように起電力を利用したものが開発されています。
4.両者の特徴の違いを理解し、用途によって使い分ける
これまで説明したように、NFCの利用は一度きりの交信でデータの送受を行う交通系ICカードのような利用や、物流分野における倉庫や店頭での製品(商品)に張られたIDラベルとしての利用でリーダ/ライターより読み書きを行う想定での在庫管理や会計での利用などが主に行われています。
またBluetoothでは、PCとキーボード・マウスなどとのワイヤレス接続、Bluetoothイヤホンに代表される今までケーブルで接続されていたデバイスをワイヤレスにして使い勝手を良くまた長時間で使用するための利用などが行われています。
このように、通信距離、転送速度、電池の有無など特性を生かして使用用途により棲み分けを行い、NFC技術とBluetooth技術が今後もさらに広い分野への応用として発展していくと思われます。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 T・T)