【機械設計マスターへの道】そもそも「機械要素」って何?(定義と分類)
この連載コラム「機械設計マスターへの道」では、ねじ、軸受、Oリングなど機械要素部品について何回か解説しました。
今回は、「そもそも機械要素とは何なのか?」ということについて、その定義と分類、考え方について確認しておきたいと思います。
1.機械要素の定義
機械は、いろいろな部品の組合せから成り立っています。
さらに1台の機械は、いくつかの機構から成り立つ複雑な構造となります。
たとえば、自動車には、サスペンション、ステアリング、エンジンなど多数の機構があります。
各機構を分解すると、それ以上は分解できない部品群が現れます。
これら部品のなかには、ねじ、軸受、など各種機械およびその機構に、共通的かつ標準的に使われている部品があります。
機械を構成する最小単位の部品であって、個々に設計したり、その都度工場で製作したりするのではなく、標準品から選択するか、専門メーカから購入する部品を機械要素といいます。
2.機械要素の分類
機械要素は、その役割・目的別に表のように分類することができます。
一例として、構造が比較的単純なわりに、多くの種類の機械要素が使われる、片吸込み単段渦巻きポンプの、機械要素を含む全部品を分解した展開図を図に示します。
(渦巻きポンプの部品展開例)
3.機械要素の標準化
機械を機械要素も含めて最初から設計しようとすると、大変な労力(時間)と費用がかかります。
そこで、機械要素の寸法、精度、材料、強度等に関する規格が制定されており、設計者は規格やメーカのカタログに記載されている標準品の中から、設計仕様に合う機械要素を選択するようになっています。標準に無い機械要素を発注すると、製作するための治具や型から作る必要があり、コストアップにつながるので避けるようにします。
材料についても、標準外の特殊材を指定すると調達コストがかかるので、標準材質から、設計仕様の環境に適した材料を選択します。
設計する製品仕様を満足するために、好き勝手に機械要素寸法を変えるのではなく、標準機械要素を上手く活用することが重要です。
また、機械の全機構や、寸法別機械シリーズ、機種、など製品群全体を見通して機械要素の共有化を図ることも、設計合理化と数量メリットによるコストダウンの観点で価値があります。
機械設計者は、各機械要素について基本的な知識を持ち、設計する機械の使用に適合する機械要素を、機能面(Q)とコスト・納期面の両面で適切に選択することが求められます。
次回は機械要素の一つ「ねじ」のうち、「小ねじ」(ビス)の種類と用途を解説します。
(アイアール技術者教育研究所 S・Y)