3分でわかる技術の超キホン インターロイキン-4(IL-4)と医薬品
「インターロイキン-4」(IL-4)は、主に活性化ヘルパーT細胞から産生され、B細胞、T細胞、肥満細胞、単球・マクロファージおよび種々の血液前駆細胞などに影響を及ぼす多面的な作用を持つサイトカインとして知られているものです。
今回は、IL-4とそれに関連する医薬品を取り上げてみました。
目次
1.インターロイキン-4とは?
IL-4は、129個のアミノ酸からなる可溶性のたんぱく質で、造血などに関与する「ヘマトポエチンファミリー」というサブファミリーに分類されているものです。
主に、活性化CD4+ T細胞をはじめ、マスト細胞、NKT細胞などによって産生されます。抗原提示細胞の増殖、分化を促進する働きがあります。
なかでも、B細胞によるIgEの産生を著明に亢進させることや、B細胞膜上にIgE・Fc receptorを発現させることなどから、アトピー性皮膚炎においてもその原因にIL-4が関与していると考えられています。
このIL-4とIL-5の遺伝子は、1986年本庶佑先生によって同定されています。
2.インターロイキン-4受容体
IL-4受容体は2種類存在し、α鎖(IL-4Rα)と共通γ鎖からなる「type 1 IL-4受容体」と、α鎖(IL-4Rα)とIL-13受容体α1鎖(IL-13Rα1)からなる「type 2 IL-4受容体」が存在するとされています。この受容体にIL-4 (IL-13)が結合するとシグナルが伝達されることになります。
IL-4は、アレルギー惹起作用、抗感染症を示し、気管支喘息などのアレルギー疾患、膠原病、高IgE血症などとの関連が報告されております。
一方、IL-4の過剰発現は、上皮腫瘍の増殖と生存を媒介し、その成長に関与する可能性も示唆されています。
3.アレルギー反応とインターロイキン-4
アレルギー反応が起きた際、異物の侵入を全身に伝えるサイトカインであるIL-4が体内で作り出されます。
IL-4は、抗体産生細胞であるB細胞を刺激し、アレルギー反応の原因である「免疫グロブリンE(IgE)」という抗体の産出を促します。
さらに、IL-4自身を産生するT細胞も増加させ、アレルギーを起こしやすい体内環境を作り出します。
4.インターロイキン-4に関連する医薬品
① スプラタストトシル酸塩
気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎に効能効果を有する薬剤です。
スプラタストトシル酸塩の作用機序としては、ヘルパーT細胞からのIL-4及びIL-5の産生抑制に基づく、好酸球浸潤抑制作用、IgE抗体産生抑制作用等により、抗アレルギー作用が発揮されるものと考えられています。
② モメタゾンフランカルボン酸エステル
モメタゾンフランカルボン酸エステルは、合成副腎皮質ステロイド薬で、抗アレルギー作用及び抗炎症作用を有しています。
気管支喘息、アレルギー性鼻炎などに使用される薬です。吸入剤、点鼻剤、軟膏などの剤形があります。
モメタゾンフランカルボン酸エステルの作用機序としては、ヒトのヘルパーT(Th)細胞からのIL-4及びIL-5産生(Th2細胞の活性化)を抑制(in vitro)します。
また、皮下投与による能動感作マウスのIgE及びIgG1抗体産生の抑制や、気管内投与により抗原誘発喘息モデルにおける喘息反応抑制作用を示したとされています。
③ デスロラタジン
デスロラタジンは、ロラタジンの活性代謝物であり、持続的なヒスタミンH1受容体拮抗作用を有するアレルギー性疾患治療薬で、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)に伴うそう痒に効能効果を有する薬剤です。
デスロラタジンは、ヒト肥満細胞又は好塩基球からの各種刺激によるIL-4、6、8及びIL-13の産生を抑制するとされています。
④ デュピルマブ(遺伝子組換え)
デュピルマブは、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に使用される薬です。
ヒトIL-4受容体のαサブユニットに対する遺伝子組換えヒトIgG4モノクローナル抗体で、IL-4、13受容体サブユニットに特異的に結合し、IL-4及び13の両シグナル伝達を阻害することにより、気管支喘息などに効果を示します。
また、アトピー性皮膚炎の病態に深く関与するTh2型炎症反応を抑える作用を示します。
その他、血清中IgE濃度、アレルゲン特異的IgG1濃度等を低下させるとともに、肺好酸球浸潤、杯細胞化生並びに肺機能障害を抑制するとされています。
ということで今回は、「インターロイキン-4」と関連する医薬品について簡単にご説明しました。
次回は「インターロイキン-5」(IL-5)をご紹介します。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)
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