メラニンとメラミンの違いとは?性質・特徴を比較して解説

「メラニン」と「メラミン」は名称がよく似ているため、しばしば混同されます。
しかし、メラニンは皮膚や毛髪に含まれる生体色素であるのに対し、メラミンは樹脂原料として用いられる工業用化学物質であり、両者は性質も役割も全く異なる物質です。
本記事では、それぞれの特徴や生成・利用のされ方を比較しながら、両者の違いをわかりやすく解説します。
1.「メラミン」と「メラニン」の比較
表1はメラニンとメラミンを比較したものです。まずは構造の違いをご覧ください。
両者は、いずれも窒素を含む有機化合物ですが、全く別の物質です。
メラミンは窒素含量が67wt%と極めて高いのが特徴であり、有機化合物の中でも窒素含有率が非常に高い部類に入ります。
メラニンは、皮膚や毛髪などに含まれる生体色素で、紫外線を吸収する機能を有します。一方、メラミンは樹脂原料として用いられる工業製品です。また、メラニンがアミノ酸のチロシンから生体内の酵素反応で合成されるのに対して、メラミンは尿素の加熱縮合により合成されます。
外観はメラニンが黒色なのに対してメラミンは白色です。両者はギリシャ語の“黒い”を意味するmelasを共通の語源としており、それが両者の名前の類似の一因なのですが、実際の色は対照的です。メラミンは本来白色ですが、製造時の副生物が黒色であることから、この名が付いたとされています。
【表1 メラニンとメラミンの比較】

2.メラニンが合成されるメカニズム
皮膚などに紫外線が当たるとDNAを守るためにメラニンが合成されます。
メラニンの生合成路を図1に示します。

【図1 メラニンの生合成経路1)】
紫外線が当たるとメラニンの生成部位であるメラノサイトが刺激され、「チロシン」というアミノ酸が「チロシナーゼ」という酵素の作用によりドーパへと変化します。
これが出発点となり、最終的にメラニンが合成されます。
メラニンの合成が過剰になるとシミなどの生成につながります。これを防ぐため、すなわちメラニン合成を阻害するために、さまざまな方法(美白法)が開発されています。その中では、酵素であるチロシナーゼの働きを止める方法が代表的であり、アルブチンなどが使用されています。
3.メラミンの特徴
(1)メラミン樹脂
メラミンは「メラミン樹脂」と呼ばれる熱硬化性樹脂の原料として使用されます。
図2は日本国内での熱硬化性樹脂の種類別生産量を示したものです。
熱硬化性樹脂ではフェノール樹脂が代表的であり生産量も最大ですが、メラミン樹脂も一定の生産量を占めています。
フェノール樹脂がフェノールとホルムアルデヒドが原料であるのに対して、メラミン樹脂はメラミンとホルムアルデヒドが原料です。
メラミン樹脂にはフェノール樹脂にはない次のような特長があります3)。
- 1)フェノール樹脂がやや柔らかいのに対して、メラミン樹脂は高い表面硬度と耐摩耗性を有しています。このため化粧板やフローリング表面層として利用されています。
- 2)フェノール樹脂が黒色に近いのに対してメラミン樹脂は白色・淡色であるため意匠性を高めることが可能です。この特性は食器や化粧板に活かされています。

【図2 日本国内における熱硬化性樹脂の種類別生産量(2024年)2)】
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(2)メラミンの特性が悪用された事例
メラミンは白色で、窒素含有率が著しく高いことが特徴です。
しかし、これが悪用された事件が過去にありました。
ミルクを希釈したうえでメラミンを混入する偽装ミルク事件が、2008年に発生しました。ミルク中のタンパク質含量を窒素濃度で判定するという品質管理手法の盲点を突いた犯罪であり、実際に健康被害も報告されました。現在では、ミルクやそれを使用した食品中のメラミン濃度を測定する対策が講じられています。
以上の解説を通じて、名称がよく似ているメラニンとメラミンが、実際には由来も性質も用途も大きく異なる全く別の物質であることをご理解いただけたのではないでしょうか。
本記事が、両者の違いを正しく整理し、名称の類似による誤解や混同を防ぐ一助となれば幸いです。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)
《引用文献、参考文献》
- 1) 岸田良ら, メラニン色素の生合成, 大阪大学出版会(2019)
- 2) 石油化学工業協会(WEBサイト), 「石油化学と合成樹脂」合成樹脂の生産
https://www.jpca.or.jp/statistics/annual/gousei.html - 3) 三輪一郎ら, ユリア・メラミン樹脂, 日刊工業新聞社(1969)


































