3分でわかる技術の超キホン Friedel-Crafts反応と医薬品
Friedel-Crafts反応は、Diels-Alder反応同様に、大学の有機化学の教科書に必ずといってよいほど載っている有名な化学反応で、多くの有機化合物の合成に利用されております。
Friedel-Crafts反応を用いた医薬品関連物質の合成反応をご紹介いたします。
目次
Friedel-Crafts反応とは?
Friedel-Crafts反応とは、Lewis酸およびBronsted酸を触媒とする親電子置換反応をいい、主にC-C結合の形成を伴って二分子またはそれ以上の分子が結合する反応といえます。
代表的なものとしては、芳香環へのアルキル化、カルボン酸塩化物を用いたアシル化が挙げられますが、アルケンやカルボカチオン中間体、エノン、エポキシドも親電子置換反応が生じる反応もFriedel-Crafts反応に含める場合もあるようです。
アルキル化は、第一級アルキルベンゼンを合成するのが難しく、多置換体が生成してしまうなどの欠点があるためあまり用いられませんが、アシル化は広く用いられています。
Friedel-Crafts反応については、多くの解説、反応例、論文等々が発表・公開されていますが、ここでは、天然物や医薬品の合成に用いられている例をご紹介いたします。
Friedel-Crafts反応の利用例
①リスペリドン
統合失調症に用いられる薬剤で、内用液、錠剤、OD錠として服用されています。
薬理作用としては、主としてドパミンD2受容体拮抗作用及びセロトニン5-HT2受容体拮抗作用(セロトニン・ドパミン・アンタゴニスト)に基づく、中枢神経系の調節によるものと考えられています。
化合物としては、ベンズイソオキサゾール骨格を有するものですが、中間体の合成にFriedel-Crafts反応が用いられています。
②クロルタリドン
サイアザイド系利尿薬で、高血圧、心不全などに用いられていましたが、販売中止となっています。
中間体の合成にFriedel-Crafts反応が用いられていたようです。酸無水物を用いたアシル化反応です。
①同様にハロゲン化ベンゼンに対するFriedel-Crafts反応ですが、ハロゲン化ベンゼンは、o,p-配向性ですので、化学式のような化合物が主生成物として得られます。
③ジクロフェナク
非ステロイド性の鎮痛・抗炎症剤です。
ジクロフェナクは、シクロオキシゲナーゼを阻害することによってプロスタグランジン合成を抑制するため、解熱・鎮痛効果があると考えられています。
多くのジェネリック、OTC薬も出ています。
化合物としては、フェニル酢酸の誘導体ですが、中間体として、分子内Friedel-Crafts反応を用いています。
④エピネフリン、アドレナリン
副腎髄質より分泌されるホルモンであり、また、神経節や脳神経系における神経伝達物質です。
この物質の化学合成にも、中間体としてFriedel-Crafts反応が用いられています。
Friedel-Crafts反応に関する特許・文献を調べてみると?
特許検索
Friedel-Crafts反応を探してみると、特許分類(FI)として下記の分類が見つかりました。
- C07C45/46 ・・フリーデル・クラフツ反応によるもの
日本特許庁のデータベース「J-Platpat」で検索してみると、このFIは209件がヒットしました。
また、キーワード「フリーデル・クラフツ」と、FI=A61K(※医薬品等に関する広い分類[サブクラス])を掛け合わせると711件がヒットしました。
その中には、種々の医薬品・誘導体の製法に関する特許がありました。
文献検索
文献データベース「J-GLOBAL」を用いて「フリーデル・クラフツ反応」で検索したしたところ、文献が54件、特許が25件ヒットしました。
中には、ザルトプロフェンの製造法に関する特許文献などが検出されました。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)
☆医薬分野に関する特許調査サービスは日本アイアールまでお気軽にお問い合わせください。