環境技術

ブルーカーボンとは?増産に向けた日本の有望技術を紹介

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ブルーカーボン増産に向けた日本の有望技術

皆さんは「グリーンカーボン」と「ブルーカーボン」の違いが瞬時にお分かりになりますでしょうか。
紛らわしいことにカーボンだけではなく、水素にもグリーンとブルーの区分があります。
表1はこれらの定義を対比してまとめたものです。
カーボンと水素ではグリーンとブルーの区分が異なります

 

【表1 カーボンと水素におけるグリーンとブルーの区分】
カーボンと水素におけるグリーンとブルーの区分

 

1.ブルーカーボンとは?

表1に記載の通り、「ブルーカーボン」とは二酸化炭素CO2を生物学的に海中に固定することを意味します。
グリーンカーボンのグリーンが地表の樹木を表すのに対して、ブルーカーボンのブルーは海の象徴だと推察されます。

海藻類をはじめとして、海がCO2固定に大きな役割を果たしていることは古くから知られています。
その中で2009年に国連環境計画が「ブルーカーボン」と題した報告書を出して環境保全のための海洋の積極活用を打ち出したことを契機に、この用語が「海の森」活動として世界中で認知されるようになりました。
ブルーカーボンに関する詳細な情報は近刊成書をご参照ください1)

このブルーカーボンは島国日本が大きな役割を果たせる分野です。
日本には図1に例示したブルーカーボン生態系があります2)
ブルーカーボン増産の取り組みにおいて、技術立国日本として、現時点でどんな有望技術を持っているのか見てみましょう。

 

日本におけるブルーカーボン生態系
【図1 日本におけるブルーカーボン生態系 ※各画像引用2)

 

2.ブルーカーボン増産に関する日本の有望技術

(1)2価鉄の徐放機構

植物一般の増殖に窒素・リン・カリウムに加えて微量の2価鉄Fe2+が有効なことが知られており、これは海草・海藻類も同様です。
問題なのはFe2+が、増殖効果のない3価鉄Fe3+へと、水中で数分から数十分の短時間で簡単に酸化されてしまうことです。水槽での培養ではFe2+の溶液を継続的に添加することもできますが、海洋では労力的にもコスト的にもそれは不可能です。海草・海藻類増産のためにはフレッシュなFe2+が海中で手間をかけずに少しずつ生成し、それが長期間続く仕組みが必要です。どうすれば良いでしょうか?

東洋ガラス株式会社株式会社不動テトラによって開発された緩溶解性ガラスは上記の目的にかなうものです3)。両社はブルーカーボンという用語が誕生する前の1990年代から検討しています。
通常のガラスは耐水性が高い素材ですが、緩溶解性ガラスでは閉じ込められたFe2+が水の加水分解で表面から浸食されて非常にゆっくりと溶出するように成分調整されています。約10年間Fe2+・ケイ酸・リン酸イオンを溶出するとされています。

モルタルプレートの表面に緩溶解性ガラス粒子を露出させたものを海藻類の付着基盤とし、静岡県の水深5mの海底に水平架台を設置し、プレート上にアカモクの成熟個体を播種して試験した結果を図2-1と図2-2に示します4)

 

アカモクの葉長
【図2-1 アカモクの葉長 ※引用4)

 

アカモクの個体数
【図2-2 アカモクの個体数 ※引用4)

 

アカモクの葉長でも個体数でも、緩溶解性ガラスを用いた試験区で対照よりも高い増殖速度が得られていることが分かります。
ただ、このガラスはまだ認知度が高くないので、積極的な普及活動が今後の課題とされています5)

一方、日本製鉄株式会社は、製鉄工程で発生する石状・砂状の副産物である鉄鋼スラグを用いた藻場造成技術の開発に取り組んでいます6)
鉄鋼スラグの中でも製鋼スラグは鉄分の含有率が高くて、しかも二価鉄Fe2+が過半を占めています。
製鋼スラグに人工腐植土を混ぜ合わせると、人工腐植土から生成した腐植酸が製鋼スラグから溶出したFe2+と錯体を形成して結びつき、酸素が豊富に存在する海水中でもFe2+の状態で海藻に届くとされています。

 

(2)増産につながる品種改良

神奈川県水産試験場は、磯焼け(海藻が消失する現象)で失われた相模湾の藻場を再生するため、重要な海藻であるカジメを増産するための品種改良に取り組んでいます。
2021年10月には、1年半を要するカジメの成熟期間を半年に短縮した早熟カジメの育成に成功したと発表しました7)

この他にも北海道での昆布をはじめ8)、他の道県でも品種改良による増産を目指した開発が進行中です。
日本のお家芸ともいえる分野であり、今後の進捗が大いに期待されます。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)

 


《引用文献、参考文献》


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