【アンテナ構造の基本①】ダイポール/モノポールの仕組みと特性

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ダイポールアンテナとモノポールアンテナ

当連載「基礎からわかるアンテナ技術」では、これまでにアンテナの特性やパラメータについて解説してきましたが、それらはすべて「どのような構造のアンテナを使うか」と密接に関係しています。
今回は、数あるアンテナ構造の中でも基本的で、かつ多くのアンテナの原型となっているダイポールアンテナモノポールアンテナを取り上げます。いずれのアンテナも構造が単純であるため、電流の流れや放射の仕組みを直感的に理解しやすく、アンテナを学ぶうえでは重要な存在です。

 

1.アンテナの基本構造を理解する意義

アンテナ特性は、回路や測定条件だけで決まるものではありません。
アンテナの形状や寸法、給電方法といった構造そのものが、放射パターンやインピーダンス、帯域に大きな影響を与えます。

 

(1)「構造」が特性を決める

同じ周波数で動作するアンテナであっても、構造が異なれば、

  • 電波をどの方向に放射するか
  • どれくらいの利得が得られるか
  • インピーダンスがどうなるか

といった特性は大きく変わります。
ダイポールアンテナとモノポールアンテナは、こうした関係を理解するための基本的かつ重要な構造です。

 

(2)基本構造を知ることが応用への近道になる

アンテナにはさまざまな形状や名称がありますが、その多くは、ダイポールアンテナやモノポールアンテナといった基本構造をもとに発展してきたものです。一見すると複雑に見えるアンテナであっても、電流の流れ方やグラウンドの扱いといった観点で整理すると、基本構造との共通点を見いだすことができます。

そのため、最初から特殊なアンテナ構造を個別に覚えるよりも、まず基本的なアンテナ構造を理解することが重要です。基礎となる構造を押さえておくことで、後続回で解説するループアンテナやパッチアンテナ、小型アンテナについても「なぜこの形になるのか」「どのような特性を狙っているのか」を理解しやすくなります。

応用構造を理解するための土台として、ダイポールアンテナとモノポールアンテナをしっかりと学んでおきましょう。

 

2.ダイポールアンテナとは何か

ダイポールアンテナは、最も基本的なアンテナ構造の一つです。

 

(1)ダイポールアンテナの基本構造

ダイポールアンテナは、一直線上に配置された2本の導体から構成されます。中央で給電され、2本の導体は互いに対称な構造を持ちます。

最も代表的なのが、「半波長ダイポールアンテナ」です。これは、全長が使用周波数の波長の約半分になるように設計されたダイポールアンテナです。

 

ダイポールアンテナ
【図1 ダイポールアンテナの基本的な構造】

 

(2)電流分布と放射の仕組み

半波長ダイポールアンテナでは、中央の給電点で電流が最大となり、両端に向かうにつれて電流は小さくなります。この電流分布が、アンテナ周囲に電界・磁界を生み、電波として空間へ放射されます。

当連載の第2回「アンテナを理解するために最低限知っておくべき電磁気学の基礎知識」の中で解説した、電流が時間的に変化することで電磁波が生じるという内容を、最もシンプルに体現している構造がダイポールアンテナです。

 

電流分布
【図2 半波長ダイポールアンテナの電流分布イメージ】

 

(3)放射パターンと特性

ダイポールアンテナの放射パターンは、アンテナ軸に対して直交する方向に強く、軸方向にはほとんど放射されません。「ドーナツ状の放射パターンを持つ」とよく表現されます。
また、半波長ダイポールアンテナのインピーダンスは、およそ70Ω程度となり、比較的扱いやすい特性を持ちます。インピーダンスは以下の式で表されます。

 Z = R + j(ωL-1/ωC) (共振時 ωL = 1/ωC)

インピーダンスは周波数に依存し、リアクタンス成分はコイルやコンデンサのようにエネルギーを蓄えたり放出したりする振る舞いをします。

 

(4)ダイポールアンテナの用途

ダイポールアンテナは、

  • 基準アンテナ
  • 屋外アンテナ
  • アンテナ評価用

など、幅広い用途で使用されます。

また、他の多くのアンテナ構造の基準や出発点としても用いられます。

 

3.モノポールアンテナとは何か

モノポールアンテナは、ダイポールアンテナを簡略化した構造と考えることができます。

 

(1)モノポールアンテナの基本構造

モノポールアンテナは、1本の導体と、その下に配置されたグラウンド(接地面)から構成されます。
導体の長さは、一般に波長の1/4程度に設計されます。グラウンドは、もう一方の導体の役割を果たしており、電磁気学的にはダイポールアンテナの半分の構造と見なすことができます。

 

モノポールアンテナ
【図3 モノポールアンテナの基本的な構造】

 

(2)電流分布とグラウンドの役割

モノポールアンテナでは、導体とグラウンドの間で電流が流れます。
グラウンドの大きさや形状は、アンテナ特性に大きな影響を与えます。
グラウンドが十分に大きく、理想的である場合、モノポールアンテナはダイポールアンテナとよく似た放射特性を示します。

 

(3)放射パターンと特性

モノポールアンテナの放射パターンも、水平方向に強い全方向性を持ちます。
ダイポールアンテナと比較すると、同じ条件下では、モノポールアンテナの方が利得が高くなる傾向があります。これは、放射が半空間に集中するためです。

またモノポールアンテナのインピーダンスは、理想的状態で 36.5 + j0 Ω でダイポールアンテナの約半分であり、一般的に50Ω系の同軸ケーブルと整合しやすい特性を持ちます。

 

(4)モノポールアンテナの用途

モノポールアンテナは、

  • 無線機器
  • 車載アンテナ
  • 携帯端末

など、実用アンテナとして広く使用されています。
構造がシンプルで、実装しやすい点が大きな利点です。

 

4.ダイポールとモノポールの比較

ダイポールアンテナとモノポールアンテナは、構造的に密接な関係を持つアンテナですが、実際の使われ方や設計上の考え方には明確な違いがあります。

モノポールアンテナは、ダイポールアンテナの一方をグラウンドで置き換えた構造と捉えることができ、電磁気学的には両者は強く対応付けられています。一方で、グラウンドの有無や設置条件の違いにより、実用上の扱いやすさや用途には差が生じます

以下に、両者の代表的な違いを整理します。

ダイポール モノポール
構造 2本導体 1本導体+グラウンド
長さ 約λ/2 約λ/4
グラウンド 不要 必要
用途 基準・評価 実用機器

ダイポールアンテナは、グラウンドに依存しない対称構造を持つため、理論と実測の対応が取りやすく、基準アンテナや評価用途に適しています。また、安定した特性を得やすい点でもメリットがあります。

一方、モノポールアンテナは、グラウンドを含めた構造として設計する必要があるものの、全体をコンパクトにできるため、実用機器への組み込みに向いています

このように、両者の違いは単なる形状の違いではなく、設置環境・設計自由度・用途の違いとして現れます。
これらを理解しておくことで、要求仕様に応じたアンテナ選定がしやすくなります。

 

5.アンテナ構造理解が次につながる

ダイポールアンテナとモノポールアンテナは非常に基本的な構造ですが、ここで理解した考え方は、ループアンテナやパッチアンテナ、小型アンテナにも同じ考え方で応用することができます。
特に、電流分布、グラウンドの役割、構造と特性の関係、といった視点は、アンテナ設計全般に共通する重要な要素です。

 

6.おわりに

本記事では、代表的なアンテナ構造として、ダイポールアンテナとモノポールアンテナを解説しました。今回の内容をしっかりと押さえておくことで、現代のアンテナ技術がどのように発展しているかが理解しやすくなります。

次回は、ループアンテナやパッチアンテナ、さらに小型アンテナといった、より実装寄り・応用寄りの構造を取り上げます。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 T・T)

 

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