【分析化学を学ぶ】HPLCの分離モードと充填剤の種類

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分析化学(HPLCの分離モードの解説)

HPLC(高速液体クロマトグラフ)の基礎知識として、今回は分離モード充填剤についてご紹介します。
分析を成功させるためには、分離モードと適切なカラムの選択が重要となります。

1.HPLCの分離モード

(1)逆相モード

固定相(極性小)/ 移動相(極性大)」の組み合わせを「逆相」と呼びます。

逆相モードは最も使用される分離モードです。
充填剤には極性の低いもの(ODSなど)を使い、溶離液には極性の高いもの(水やアセトニトリル、メタノールなど)を使います。

逆相分離では極性の高い成分から順に溶出します。

 

(2)順相モード

固定相(極性大)/ 移動相(極性小)」の組み合わせを「順相」と呼びます。

順相分離では極性の低い成分から順に溶出します。
一般に疎水性が高い低分子化合物の分離に使用されます。
逆相クロマトグラフィーが開発されるまでは、順相クロマトグラフィーが最も一般的な分離手法でした。

 

(3)HILICモード

HILIC」 は、”Hydrophilic Interaction Chromatograph“の略称です。
HILICは順相クロマトグラフィーを水系移動相の領域に拡張したものと考えることができます。
HILICモードのカラムを使用することで、逆相モードで使用されるODSカラムでは保持困難な高極性化合物の分析を可能とします。

 

(4)イオン交換モード

イオン交換モード」では、イオンの引き合う力、反発し合う力を利用して分離を行います。
イオン交換クロマトグラフィーには、陰イオン交換クロマトグラフィーと陽イオン交換クロマトグラフィーの2つのタイプがあり、またイオン交換基のイオン強度によって使用する固定相は異なります。

 

(5)配位子交換モード

配位子交換モード」は、充てん剤の対イオンである金属イオン(M+)と糖の水酸基との錯体形成能を利用した分離モードです。
配位子交換モードは、主に糖類の分離に用いられます。
対イオンとしては、銀(Ag+)、カルシウム(Ca2+)、鉛(Pb2+)、亜鉛(Zn2+)、ナトリウム(Na+)などが用いられます。

 

(6)イオン排除モード

イオン排除モード」は、有機酸分析では最も多用されているモードです。
ゲルと試料中の各成分の陰イオン同士の反発し合う力を利用して分離します。

 
この他にもアフィニティモード光学分割モードなどがあります。

 
以下、各モードについてまとめました。

モード 特徴など
順相モード 疎水性が高い低分子化合物の分離に使用
逆相モード 最も広く使われるモード
HILICモード 高極性化合物の分析に使用
イオン交換モード タンパク質、核酸等の生化学関連分野で使用
配位子交換モード 糖分析に使用
イオン排除モード 有機酸などの分析に使用

 

2.充填剤の種類

(1)シリカゲル

シリカゲルは安価で化学修飾しやすいことから一般的な充填剤として広く使われています。
最もポピュラーなカラムはODSカラムです。シリカゲルカラムの約80 %はODSカラムです。
ODSカラムはシルカゲル担体にオクタデシルシリル基(OctaDecylSilyl= ODS基,C18基)を化学結合した充填剤が詰められた逆相クロマトグラフィーで用いられるカラムです。

ODS充填剤の表面
ODS充填剤の表面

 
ODSカラムでは試料の保持が強い場合には、C18より炭素鎖が短いC8(オクチル基、-C8H17)カラム等を用いることができます。
またその他にはPh(フェニル基、-C6H5)、-NH2(アミノ基)などを修飾した様々な充填剤があります。

 

(2)ポリマーゲル

ポリマーゲルはシリカゲルより高価ですが、性能が向上した製品の販売により使用場面が増えてきました。
シリカゲル充填剤はアルカリ性の溶離液では使用できませんが、ポリマー充填剤はアルカリ耐性があるため、アルカリ性条件下での分析も可能です。
タンパク質や核酸などの生体高分子試料の分析に多用されます。

ポリマー充填剤は親水性ゲル(ポリビニルアルコール、アクリルアミドなど)と疎水性ゲル(ポリスチレン、ポリジビニルベンゼンなど)に大きく分けられます。

 

(3)その他の充填剤

カーボン系ジルコニアセルロースなどが充填剤として用いられますが、現状では種類が少なく、今後の発展が期待されます。

 
以上、今回はHPLCの分離モードと充填剤について簡単に解説しました。

 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 Y・I)

 


≪参考文献・サイト≫


 

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