3分でわかる 綿とレーヨンの違い|セルロース系繊維の構造・物性を技術面から比較

近年、ユニクロの「ヒートテック」等に代表される冬用下着が広く利用されるようになりました。これらの下着では、吸湿発熱性、保温性、伸縮性、肌ざわりなどを高めるために、複数の繊維が巧みに組み合わされています。その中で、水分吸着による発熱機能に大きく関係しているのが、綿やレーヨンなどのセルロース系繊維です。いずれもセルロースを主成分とする繊維ですが、綿は天然繊維、レーヨンは再生繊維であり、製法や内部構造には大きな違いがあります。
では、同じセルロース系繊維である綿とレーヨンは、物性や機能にどのような差があるのでしょうか?
本記事では、両者の構造、吸湿性、湿潤熱、強度などを技術的視点から比較します。
1.綿とレーヨンの共通点
両繊維は共に図1に示すセルロース構造(β-1,4-グルカン構造)を持ちます。
セルロースは通常の水には溶けませんが、分子内に多数の水酸基を有するため、水との親和性が高いという性質があります。
このようなセルロース由来の親水性は、綿やレーヨンなどのセルロース系繊維に共通する重要な特徴です。

【図1 セルロースの構造】
2.綿とレーヨンの比較
綿は5000年以上前から綿花として栽培されている天然繊維です。
一方、レーヨンは木材由来のセルロースからの再生繊維であり、一旦セルロースを溶解させてから再度凝固させ、紡糸することにより得られます。この技術は19世紀後半に開発されたものです。
レーヨンの製造工程を概略的に化学式で示すと、以下のようになります1)。
- ① アルカリセルロースの生成(Cell-OHはセルロースを表す)
Cell-OH + NaOH → Cell-ONa + H2O - ② ビスコースの生成(硫化反応により水に可溶化)
Cell-ONa + CS2 → Cell-O-CS2Na - ③ セルロースの再生
2Cell-O-CS2Na + H2SO4 → 2Cell-OH + Na2SO4 + 2CS2
表1は綿とレーヨンを比較したものです2),3)。
両繊維の物性上の根本的な違いは結晶性にあります。
綿がセルロースⅠ型の結晶構造を有し結晶化度が約70%に達するのに対して、レーヨンはセルロースⅡ型の結晶構造であり結晶化度は35%程度とかなり低い値になります。綿でも木材中のセルロースでも天然品はⅠ型の準安定構造ですが、溶解から再凝固させてレーヨンを得る過程で、安定なⅡ型に変化すると共に結晶化度が低下します。
【表1 綿とレーヨンの比較】
| 繊維名 | 綿 | レーヨン |
| 歴史 | 5000年以上前から | 19世紀後半に発明 |
| 製法 | 天然 | 再生品(一度溶解後に凝固させる) |
| 結晶型 | セルロースⅠ型 | セルロースⅡ型 |
| 結晶化度 | 70% | 35% |
| 比重 | 1.54 | 1.50~1.52 |
| 水分率 | 8.5% | 11% |
| 乾燥状態からの湿潤熱 | 11.0 cal/g | 25.2 cal/g |
| 引張強さ (乾燥) |
3.0~4.9g/D | 1.7~2.3g/D |
| 引張強さ 湿潤/乾燥 比 |
102~110% | 45~55% |
| 肌ざわり | やや固い | 柔らかい |
なおセルロース結晶のⅠ型とⅡ型は下記イメージで区別すると分かりやすいでしょう。
- Ⅰ型:セルロース分子鎖が平行(同一方向) → 準安定
- Ⅱ型:セルロース分子鎖が逆並行(互い違い)→ 安定
この結晶性の差により、以下に述べる物性の差が生じます。
まず比重は、綿の1.54がレーヨンでは1.52程度まで低下します。
水分率は綿の8.5%がレーヨンでは11%まで高まります。レーヨンは、結晶化度が低く非晶領域が多いため、水分子が入り込みやすく、結果として水分率や湿潤熱が高くなります。
また、乾燥状態からの湿潤熱もレーヨンの方が2倍以上高い値を示します。
繊維としての引張強さに関しては、両者の違いは湿潤状態で顕著になります。
乾燥状態においても綿の方がレーヨンより高強度なのですが、綿では湿潤状態で乾燥状態より強度が少し増加するのに対して、レーヨンは湿潤状態では半分程度にまで大きく低下してしまいます。この理由については、綿では水分の存在により水素結合状態が変化し、繊維構造がより安定化するのに対し、レーヨンでは結晶化度が低く非晶領域が多いため、水分の影響を受けて構造が緩みやすいためと説明されています。
肌ざわりという点では、綿がやや硬いのに対して、レーヨンは柔らかめです。レーヨンは、絹に似た光沢やしなやかな風合いを持つことから、古くは「人絹」とも呼ばれていました。
3.綿とレーヨンの現状と今後
本記事では、綿とレーヨンの物性面での差に重点を置きました。
いずれもセルロースを主成分とするため、バイオマス由来材料として位置付けられ、条件によっては生分解性も期待できます。一方で、実際の環境負荷は、綿の栽培条件、レーヨンの製造工程、薬品回収、染色加工、混紡の有無などにも左右されます。
図2は、両繊維の世界における近年の生産量を示したものです4)。
いずれも堅調に推移していることが分かります。

【図2 セルロース系繊維の生産量(世界)】
綿とレーヨンは、いずれもセルロースを主成分とする身近な繊維ですが、その結晶構造や結晶化度の違いにより、吸湿性、湿潤熱、強度、肌ざわりには明確な差があります。こうした違いを理解することで、用途に応じた繊維選択や製品設計の考え方も見えてきます。
今後も両繊維は、それぞれの特徴を活かしながら、快適で機能的な衣料を支える素材として重要な役割を果たしていくと考えられます。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)
《引用文献、参考文献》
- 1)磯島康之, レーヨンの工業的製造法,性質および利用法, 化学と教育60(4) 178-181(2012)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/60/4/60_KJ00008046717/_pdf/-char/ja - 2)新版 繊維製品消費科学ハンドブック, 光生館(1988)
- 3)渡辺貞良ら, X線法によるセルローズ繊維の結晶化度の測定, 工業化学雑誌72(7) 1565-1572(1969)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nikkashi1898/72/7/72_7_1565/_pdf/-char/ja - 4) Textile Exchangeのwebsite所収データから作成
https://textileexchange.org/knowledge-center/reports/materials-market-report-2025/

































