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LTspiceで学ぶ電子部品の基本特性とSPICEの使いこなし(セミナー)
2024/12/5(木)10:00~16:00
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早わかりポンプの第20回では「容積形ポンプの基礎知識」を解説しました。
今回は、容積形ポンプの中で最も数多く使われているプランジャーポンプ(プランジャポンプ,Plunger Pump)に焦点を当てて、ピストンポンプとの違いなどを中心に解説します。
目次
早わかりポンプ第20回のおさらいになりますが、容積形ポンプは、往復形と回転形に大きく分類され、さらに往復形・回転形各形式ポンプには、下図のような種類のものがあります。
【図1 容積形ポンプの分類】
往復形ポンプには、上の図の3つの種類がありますが、「ダイアフラムポンプ」は可撓性膜(ダイアフラム)が膨らんだり凹んだりするような往復運動を繰り返すことによって液体を吸込み吐出しする特殊構造のポンプです。「プランジャーポンプ」と「ピストンポンプ」が代表的な往復形ポンプといえます。
ピストンポンプとプランジャーポンプは、吸込み弁と吐出し弁を備えたシリンダ内を、ピストンまたはプランジャーが往復動することによって液を吸込み吐出しするポンプです。水鉄砲を思い浮かべると、液を押し出す原理がイメージできると思います。
ピストンまたはプランジャーが吸込み管から遠ざかる方向に動くと管内が負圧になって、吸込み弁が開いて吐出し弁は閉じて液を吸上げ、吸込み側に近づく方向に動くと管内圧力が上昇して、吸込み弁が閉じ、吐出し弁が開いて液を押し出します。
ピストンもプランジャも、ともにシリンダ内部を摺動する円筒型の部品です。
ロッドが短く、受圧面積に対する摺動面積比が小さいものを「ピストン」といい、シール部品はピストン側に設けられます。
一方、ロッドが長く、受圧面積に対する摺動面積比が大きいものを「プランジャー」といい、シール部品はシリンダ側に設けられます。
プランジャーポンプは、摺動長さが長く安定していることと、シール部品がシリンダ側に設けられていてシール性が高いことから、高圧用途に適しており、標準仕様で35MPa程度、特殊仕様で60MPa程度の高圧まで使用することが可能です。ピストンポンプは、一般的に20MPa程度までの圧力が上限とされています。
下図にピストンポンプとプランジャーポンプの構造の違いを模式的に示します。
【図2 ピストンポンプとプランジャーポンプの構造図(比較)】
ピストンあるいはプランジャの連続往復運動を実現するために自動車のエンジン‐カムシャフト機構のように、クランク機構を用いて、モータなどの駆動機の回転運動を往復運動に変換します。
機構の種類として、単動単ピストン、復動単ピストン、3連単動プランジャーなどがあります。
往復ポンプでは、流体はピストンまたはプランジャの押し込み行程中のみ吐き出され、引き抜き行程中は流量がゼロとなるため、圧力脈動が発生します。配管系に悪影響を及ぼすことがないよう、脈動低減を図るためにアキュムレータ(畜圧器)を設置します。
ロッド直径をD[m]、行程(ストローク)をL[m]、往復数をN[1/s] とすれば、ロッドとシリンダのすき間からの漏れが無いとしたときの理論吐出し量Qthは、
Qth=πD2LN/4[m3/s]
となります。
【図3 単動単ピストン/復動単ピストン/3連単動プランジャー】
回転軸を中心に、数本のプランジャーを配置して、左図のようにプランジャーと連結する円板を回転軸に対して傾ける(斜板)か、右図のようにプランジャーの軸を回転軸に対して傾ける(斜軸)構造として、傾き角度αを変化させることにより、プランジャーの工程(ストローク)を変えて同一回転速度における吐出し量を可変とすることができます。
傾き角度αがゼロのときプランジャーは往復運動をしなくなるので、吐出し量ゼロとなります。
また傾き方向を変えることにより、吸込み・吐出しの方向を逆とすることができます。
【図4 斜板式/斜軸式プランジャーポンプ】
上記の構造は、いずれも複数のプランジャを軸方向に並べた「アキシャルプランジャーポンプ」です。
他に、放射状に複数のプランジャーを組み込んだロータを、偏心カムリングの中で回転することにより、カムリングに沿ってプランジャーが出入りする作用を利用する構造のものもあり「ラジアルプランジャー」といいます。カムリングの偏心量の変化により可変容量とすることができます。
ただし、高速化・小型化の点では、アキシャル構造の方が優れており、ほとんどアキシャルプランジャーポンプが使われています。ラジアルプランジャーは主としてポンプではなく、低速・大トルクの油圧モータとして使われます。
プランジャーポンプは、高温、高圧、高粘度の液体、腐食性の高い液体など様々な液体を扱う場面で使用されます。高圧洗浄機などで使われていることも多いです。
プランジャーポンプは使用条件が厳しいことが多いため、シリンダ、プランジャー、吸込み・吐出し弁、シール部品などの部品に、腐食、摩耗、き裂などが発生すると、吸込み不良、吐出し量、吐出し圧力低下などの性能異常や、外部への液漏れなどのトラブルにつながります。
したがって、日常の運転状態監視と、定期的な分解点検、部品交換が重要となります。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・Y)