3分でわかる 絶縁材料の基礎知識(種類と代表例、劣化原因など)

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絶縁体

私たちの身の回りには様々な物質がありますが、導電するかどうかという観点からは「導体」「絶縁体」と、その中間にある「半導体」に分けられます。
今回のコラムでは、絶縁体を用いた「絶縁材料」の基礎知識を解説します。

1.《前提知識》導体、絶縁体、半導体と「電気伝導率」

「導体」は電気を通しやすく、物質内に自由に動ける電子や正孔を多く有しています。その一方、「絶縁体」の価電子は原子の周りに束縛されて、あまり自由に動くことができず、電流は流れません。両者の中間的な電気の通し方をするものが「半導体」と呼ばれます。

導体、絶縁体、半導体は一口で電気を通すかどうかにより区別できますが、その間には絶対的な境界線はありません。絶縁体は特定の条件下で電気が流れ、導体に変化することもあります。

それらの導電能力の区別は「電気伝導率」(導電率、σ)、「電気抵抗率」(抵抗率、比抵抗、ρ)で表せます。

「電気伝導率」はその名の通り、電子の流れやすさを表す物性値です(式1)。
電子の濃度nと移動度μの掛け算で表せますが、室温付近では移動度は物質ごとに大きくは変わらないため、電子濃度nが物質の電気伝導率を大きく左右しています。つまり、自由に動く電荷の数が多ければ、導電率が高くなります(図1)。

 σ=neμ  e:電子1個が持っている電荷(1.6×10-19クーロン)  ・・・式1

「電気抵抗率」は導電率の逆数で、どれほど電気を通しにくいかを表す物性値です(式2)。
自由電子の数が多ければ多いほど電気抵抗率は低くなり、少なければ少ないほど電気抵抗率は高くなります。
自由電子の数が限りなく0であれば、絶縁体になります。

 ρ=1/σ  ・・・式2

 

導体、半導体、絶縁体と電気伝導率の区別
【図1 導体、半導体、絶縁体と電気伝導率の区別】

 

[※関連記事:そもそも半導体とは?電気伝導の基本からわかりやすく解説 ]

 

2.絶縁体の基本

絶縁体(insulator)は自由電子をほとんど含みません
ガラス、紙、テフロンといったものはよく知られている絶縁体です。

絶縁体を電場中に置くと、電圧を加えても殆んど電流は流れませんが、分極する性質を持ちます。誘電性に着目した場合、絶縁体を「誘電体」とも呼ばれます。

ただし、電圧がある限度を超えると、絶縁物を貫通して放電が起こります。この現象を「絶縁破壊」といい、限度の電圧を「耐電圧」といいます。

 

3.絶縁材料の種類(分類)と代表例

絶縁材料は漏電を防ぐなどの用途で広く使われています。
例えば家電製品のコードやケーブルなどの電線は絶縁体を使っています。その多くはゴムが使用されていますが、ビニール素材を使用した絶縁体もあります。
ビニール素材の絶縁体は熱に弱いため、電熱器具などのコードには使用できません。その一方で水には強いため、電源タップや通常の電気器具コードに利用されています。

絶縁材料は形態から気体絶縁材液体絶縁材固体絶縁材に分けられます。

 

(1)気体絶縁材料

通常、常温常圧の乾燥ガスは優れた電気絶縁性を持っています。
ガス絶縁材は、空気や六フッ化硫黄ガスなどが一般的に使用されています。

 

(2)液体絶縁材料

液体絶縁材には天然鉱油、天然植物油、合成油などの絶縁油(絶縁オイル)があります。
主に電源トランス、高圧ケーブル、コンデンサなどに使用されています。

天然鉱油は原油から得られる中性の液体です。
天然植物油にはヒマシ油大豆油などが含まれます。
合成油には酸化ビフェニルメチルシリコーンオイルベンジルメチルシリコーンオイルなどがあります。

 

(3)固体絶縁材料

固体絶縁材は絶縁性に優れたものが数多くあり、広く使われています。
よく使用される固体絶縁材にはゴムプラスチックガラスセラミックスマイカアスベストなどがあります。

 

4.絶縁材料の劣化要因と対策

絶縁材料は電場中で分極、誘電加熱、絶縁破壊などの物理現象を起こし、経年変化により劣化して絶縁材を損傷します。電気製品の故障の多くは絶縁材の劣化によるものです。
例えば、高電圧下で絶縁材料の放電による劣化、低電圧下で電気製品の熱劣化、衝撃や振動による機械的劣化、紫外線・温度湿度・粉塵・オゾン・酸・アルカリなどの要因で引き起こされる環境劣化があげられます。

絶縁劣化による事故を未然に防ぐためには、予防保全が重要です。例えば、環境劣化を防ぐために設備や機器の清掃、環境対策(紫外線吸収剤、遮光、断熱材)などが必要です。
放電による劣化は、日常点検・定期点検によって絶縁抵抗を定期的に測定し、絶縁状態が保たれているかを確認しましょう。

 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・L)

 


《引用文献、参考文献》


 

 

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