3分でわかる技術の超キホン リコピンとは?(化学構造・作用、トランス体/シス体など)

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トマトソース

リコピン・・・トマトに含まれる健康にいいものとよく言われます。
抗酸化作用が知られていますが、実は黄色いトマトが良いそうです。

リコピンとは?

リコピン(リコペン、lycopene)は、成熟したトマトなどに存在する一種のカロテノイド色素で、普通 1kgの新鮮な成熟トマトには 0.02gのリコピンが含まれています。

化学構造的には、8個のイソプレン単位が集まったテトラテルペンであり、炭素と水素のみから構成されるため水には溶けない、深赤色の針状晶です。

 

リコピン化学構造式

リコピンの化学構造式(オールトランス体)

 

トマトの他、柿、ニンジン、スイカなど赤色の果物・野菜に含まれていますが、イチゴやサクランボには含まれてはいません。
リコピンの名称は、トマトの学名である「リコペルシコン・エスクレンタム(Lycopersicon esculentum)」に由来しております。ちなみに、リコピンはドイツ語読みです。

 

リコピンにはどんな作用があるのか?

抗酸化性

リコピンの抗酸化作用は、ペルオキシラジカルの捕捉能力によるもので、その作用はビタミンEの100倍以上とされています。

 

癌抑制作用

動物実験では、肝臓、大腸のがんに抑制作用が研究発表されています。より具体的には、化学的に誘発されたラット膀胱腫瘍形成を阻害すること等が見出されています。

ヒトでは、トマト食品の消費が前立腺癌のリスク低下と関連付けられており、食品リコピンの存在に起因することが示唆されています。40歳以上の男性では、リコピンを継続的に摂取することで、前立腺肥大のリスクが35%抑制されるとの報告もあります。

また、血清リコピン濃度は、女性における乳癌リスクの低下と関連付けられています

癌予防のためにリコピンをとるとすると、「1日に5~10mgとるとよい」、ただし、「生のトマトに含まれる状態では吸収率がよくない。加熱すると吸収率が高まる。トマトピューレなら1日40g程度とればいい」とアメリカの癌専門医は話しています。

 

美白・美肌

リコピンは、メラニン生成抑制、コラーゲン産生促進、日焼け予防 肥厚抑制、角質層状態の改善、眼下のシワの改善効果があるとの報告もあります。また、生活習慣病に関する研究もされているようです。

 

トランス-シス異性について

リコピンには大きく分けて、「トランス体」と「シス体」があります。

リコピンの分子中の二重結合がすべてトランス結合であるリコピンは、トランス体とかオールトランス体といわれています。
一方、部分的にシス結合になっているものは、モノシス体、ポリシス体といわれ、これらシス体のリコピンを、シスリコピンあるいはプロリコピンなどと呼ぶことがあります。

シス体は、トランス体と比べて、色強度が低いこと、融点が低いこと、吸光係数が小さいこと、また、シス体は、高極性であり、油により溶けやすく、結晶化しにくいなどの特長があります。
リコピンは、加工時に、トランスからシスに異性化することが知られており、各種のトマトベースの食品において、トランス体は35~96%、5−シス体は4~27%となっています。
ただし、トランス体のほうが安定であることから、製品の貯蔵時には、シス体からトランス体への変換が起こり得ます。

二つの異性体であるトランス体とシス体は、体内での効果は同じとされていますが、シス体はトランス体よりも体内への吸収がよく(2.5倍以上)、体内での利用効率が高いとの報告もあります。

 

知っておきたいリコピンの知識

黄色いトマト

リコピンは、赤いトマトだけでなく、黄色いトマトにもリコピンが含まれています。
しかも、黄色いトマトのリコピンはシス体が多く含まれています。
また、最近ではシスリコピンを多く含む白菜の品種もあるようです。

 

吸収を高める方法

リコピンの体内への吸収を高める手法として、「加工・加熱」や「乳製品や油との同時摂取」が知られています。

 

加工・加熱

カゴメ総合研究所の研究によりますと、リコピンの吸収率は、加熱したトマトは生の1.3倍、オリーブオイルと一緒に過熱すれば、生の4倍というデータがあります。

 

油類との摂取

リコピンはトランス体もシス体も脂溶性なので、油料理で、またはオイルドレッシング等と一緒に食べると吸収がよくなります。
また、β‐カロチンとリコピンを組み合わせて摂取するとβ‐カロチンの吸収には影響はないが、リコピンの吸収は向上するとの報告があります。

 

調理

同じカゴメ総合研究所の研究によりますと、トマトのリコピンはニンニクやタマネギで調理すると吸収されやすくなりるそうです。
ニンニクやタマネギを調理することで生成されるジアリルジスルフィドが、リコピンのシス体への構造変化を促進することが報告されています。

トマト、にんにく、たまねぎを油で・・・・・・パスタソースなんかがよさそうですね。

 

リコピンに関する特許・文献を検索してみると?

(※2018年10月に検索した際のヒット件数です)

JSTの文献データベース「J-globe」で文献調査を行うと・・・

キーワード「リコペン  リコピン」別名・同義語を含めると 文献数4998件ヒットしました。

 

特許庁のデータベース「J-PlatPat」で特許調査を行うと・・・

「リコペン  リコピン」で検索すると、 全文検索では7017件、請求範囲では897件ヒットしました。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)

 

バイオ・食品関連技術の特許調査サービスは日本アイアールまでお気軽にお問い合わせください。

 

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