熱可塑性エラストマー組成物(コンパウンド)の基礎知識《概要と種類》

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ここは化学系企業(プラスチック製造企業)。

研究開発リーダーで社内講師役の鷲尾さんのところに、新入社員でプラスチックが専門でない吉本君が配属されました。

よろしくお願いします!

吉本君は熱可塑性エラストマー組成物(コンパウンド)は専門外なんだよね?

はい、そうなんです

じゃあ、まずは熱可塑性エラストマーとその歴史について説明しよう!

1.熱可塑性エラストマーとは

「熱可塑性エラストマー」とは、「熱可塑性」(熱をかければ融け、冷やすと固まる)を呈し「エラスティック」(弾性体)である素材です。

「熱可塑性」とは、高温で可塑化されてプラスチック成形機で成形できることをいい、「エラスティック」である素材「エラストマー」とは、ゴム弾性体のことをいいます。

すなわち「熱可塑性エラストマー」は、「エラストマー」という点では加硫ゴムと同様ですが、リサイクルが容易な「熱可塑性」という点で有利です。ただし、加硫ゴムは耐油性、耐熱性で優れることが挙げられます。

最近は、一部の加硫ゴム代替のための熱可塑性エラストマーの開発も盛んに行われています。

最近は環境が重要な時代になりましたからね

そうなんだ。加硫ゴムの使われている用途でオーバースペックの物から代替されてきたというわけなんだ

熱可塑性エラストマーの大分類

さて、熱可塑性エラストマーの具体例だけど、大きく2つに分類できる。

汎用エラストマーとして、塩化ビニル系(TPVC)、スチレン系(TPS)、オレフィン系(TPO)が主に挙げられる。

また、エンジニアリングプラスチックス系エラストマーとしては、ウレタン系(TPU)、エステル系(TPEE)、アミド系(TPAE)が主に挙げられる。

さあ、汎用エラストマーから説明していこう。

2.汎用エラストマー

(1) 塩化ビニル系エラストマー(TPVC)

塩化ビニル系エラストマー(TPVC)は、議論が別れますが、1980年代の「濡れ衣的である塩ビバッシング」からの復権を遂げました。60年以上のポリ塩化ビニルコンパウンド業界の歴史があり、その優れた配合・加工技術から生まれた素材なのです。

基本配合は、硬質塩化ビニル樹脂コンパウンドの場合、ポリ塩化ビニル樹脂、安定剤、滑材などの添加剤です。また、この連載に関係する軟質塩化ビニル樹脂コンパウンドの場合、さらに可塑剤や他の熱可塑性エラストマーを添加して柔らかくします。価格の安さと優れた物性、加工性、リサイクル性が持ち味です。

次はスチレン系エラストマー(TPS)とオレフィン系エラストマー(TPO)だ。

(2) スチレン系エラストマー(TPS)、オレフィン系エラストマー(TPO)

スチレン系(TPS)、オレフィン系(TPO)エラストマーは、上記「塩ビバッシング」の時期から急速にシェアを広げ、低価格の非架橋系から一部加硫ゴム代替領域に迫る高性能な架橋系まで、様々なグレードが揃っています。

いずれも、ゴムとポリオレフィン系樹脂とオイルとの混合物(ポリマーアロイ)であることから極めて複雑なモルフォロジー(ポリマーアロイしたときの混ざり具合や結晶構造の分布形態)を示します。

ゴム(オレフィン系ゴムやスチレン系ゴム)は、例えばオレフィン系ゴムの代表的なEPDMであれば、分子量分布とエチレン/プロピレン比の分布を立体的に分子設計することや、架橋点である第三成分エチリデンノルボルネン等の分布を最適化することで様々な可能性を持たせています。近年のポリオレフィン合成触媒の高性能化により高機能なポリオレフィン系ゴムの合成がなされており、今後も期待できます。スチレン系ゴムの代表的なSBC(スチレンブロックコポリマー)も分子量の大小、スチレン含有量、ソフトセグメントの種類、ジブロックとトリブロックの混合物、高分子量化、ポリウレタンブロックの導入による極性化など、原材料として豊富な製品が市場にあります。

TPSやTPOの流動相となるポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレンやポリエチレン)も上記のように高機能合成触媒の登場で驚くべきポリマーデザインを実現しています。繰り返しになりますが、ポリオレフィンにおいては特に分子量分布と各分子量における分子構造(PPであれば立体規則性、PEであれば短鎖分岐や長鎖分岐など)を立体的に考える必要があります。

このような様々な分子構造の原材料を混合するのですから、さらに混練方法や成形方法への配慮が求められます。

なかなか難しい世界ですね。

さらに、耐熱性や耐油性向上などのために「(動的)架橋」という技術が必要になるんだ。

「架橋」技術を考えるうえで、例として有機過酸化物架橋を見てみると、架橋剤がゴムやポリオレフィン系樹脂やパラフィンオイルの分子構造のどこを攻撃して架橋助剤である多官能(メタ)アクリレートがどこにグラフトするのか?グラフトした枝の先端がどこに結合するのか?ポリマーは様々な長さや構造の分子の混合物ですから、どんな長さのどんな構造の分子にグラフトしやすいのか?本当に「架橋」なのか?実際は、分子量増大により溶媒不溶のゲルが増えただけではないか?日々、このようなことを考えて(悩んで)材料メーカーや成形メーカーの技術者は開発を続けているんだ。

吉本君はとにかく私のプラスチック入門セミナーに参加して、基本的なプラスチックの見方を学ぶとよいね。ここの話も簡単に理解できるようになるよ!

小さくなってものをいうという感じですね。

その心掛けが大事だね。ここで触れたポリマーアロイや(動的)架橋については、二軸押出機のスクリューパターンセミナーでコントロールの仕方の基礎を学べるよ。

最後にエンジニアリングプラスチックス系エラストマーについて簡単に紹介しておこう。

3.エンジニアリングプラスチックス系エラストマー

ウレタン系(TPU)、エステル系(TPEE)、アミド系(TPAE)は、エンジニアリングプラスチックスの構造をハードセグメントとして、それにソフトセグメントを導入したポリマー構造を持つ耐熱性と耐油性に優れる熱可塑性エラストマーです。


もともと、エンジニアリングプラスチックを元としていることから耐熱性や耐油性に優れています。最近は、軟質化のためのゴムの添加や架橋ゴムの導入による高性能化もみられ、応用の幅が広がっています。

なるほど・・・。初回から少しヘビーでしたが、次回もよろしくお願いします。

 

(アイアール技術者教育研究所  鷲尾 裕之 講師

 


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