二軸混練押出機のスクリューデザイン(スクリュー設計)の基本を専門家が解説

Pocket

ここはとある化学系製造業の会社。

その研究開発部リーダーで社内講師役鷲尾さんの元に新入社員の吉本君が配属されました。

鷲尾さん、よろしくお願いします!
基礎的なことから教えてください。

よーし、始めよう!

1.二軸混練押出機・スクリューデザインの前提知識

(1)プラスチックコンパウンディングとは?

プラスチックは通常フィルム以外の用途においては、単独で使用されることはあまりありません。大抵は異種同士のプラスチックを混ぜ合わせたり、プラスチックにガラス繊維などを入れた強化プラスチックとして使用されます。その混ぜ合わせることを「コンパウンディング」といいます。

コンパウンディングはプラスチックを溶融させながら混ぜ合わせます。これを「溶融混練」といいます。

強度や弾性率そして耐熱性が必要な用途には充填材が含まれるのですね。

そうなんだ。

(2)コンパウンディングはどのような装置を使って行うか?

コンパウンディングを行うための装置としては、押出機(単軸、2軸等)のような「連続混練機」や、バンバリーミキサーのようなバッチ式(コンテナ毎に混練)の「バッチ式混練機」があります。

うちの会社は二軸嚙み合い型同方向押出機ですね。

そうだよ。

(3)二軸押出機においてスクリューがなぜ大切なのか?

例えば細い粒子が凝集した充填材(カーボンブラックなど)をプラスチックに溶融混練で分散(一般的な意味の分散)させるとします。

まずは、カーボンブラックの細い粒子の凝集を解いてやらなければプラスチックの中でダマになってしまい細かく分散出来ません。そこで、溶融混練する2軸押出機のスクリュー構成を最初の区間で「分散」させるように構成します。ここで言う「分散」は、例えば豆餅の豆を杵で砕く効果を言います。これによってカーボンブラックの凝集は解かれます。

次のスクリューの区間は「分配」の機能を持つ構成です。例えば、豆餅を折って畳んで突いてまた折り畳みます。すなわち位置交換です。細かく砕かれたカーボンブラックが樹脂全体にいきわたるよう位置交換されるのです。

この例から分かるように、このスクリュー構成(デザイン・設計)を材料の性質ごとに細かく調整する必要があるのです。

そうなんですね。今日勉強するスクリュー構成の意義がわかりました。

うん。じゃあ、より細かい意義を話してから本論といこう!

コンパウンドプロセス噛み合い式同方向2軸押出機は、プラスチック産業において合成プロセスと並び、きわめて重要な位置付けとされ、自動車部品をはじめとする各種用途のコンパウンド製造のため、世界各国で活用されています。

しかしながら、コンパウンド製造の技術であるスクリュー構成のデザインは、(シミュレーションソフトが普及した現代であってもなお)その複雑な機能・ブラックボックス的メカニズムから熟練が要求されます。

ここでは、長年コンパウンド研究に携わった鷲尾講師が、単純化した手法とモデルケースの解説によって、「はじめての方」でも簡単に材料に適したスクリュー構成のデザイン技術を学べるよう、導入的な知識をお話しします。

 

2.分散、分配の理論

鷲尾さん、本論をよろしくお願いします!

まず、分散、分配の理論から説明するよ。

溶融混練 → 分散混合、分配混合

わしが若いころは、こんな理論はなかったんだが…

30年前ですか?バブル世代ですね

この理論も最近ではさらに進化している。

分散、分配の理論 「かつて」と「現代」の違い

《豆入り餅を作ろう!》

分散、分配の考え方
ここで

  • 豆 → フィラー、添加剤、他樹脂など
  • 餅 → メイン樹脂

とします。

アーモンドパイでも説明できそうですね!

例)豆入りの餅を最初から作ろう!

豆を砕く
 ⇓
餅を畳んで、また延ばし広げ畳んで

この繰り返しですね。

イメージできるね。

① 「かつての」分散混合、分配混合の理論

豆を砕く←分散
 ⇓
餅を畳んで、また延ばし広げ畳んで…←分配
 
この間も豆は砕かれている←分散

対比してみてごらん。

 
② 「現代の」分散混合(溶融前)、分配混合の理論

豆を砕く←分散
  ⇓
餅を畳んで、また延ばし広げ畳んで…←分配

「分散は、溶融まで!」

変わってきているんですね。

そうなんだ。以下にまとめよう。

《分散混合・分配混合の「肝」》

分散混合が終わる(樹脂が溶融)位置以降は、分散粒子径は、変わらない!

ただし、充分に粒子径が小さくないと再凝縮するからスクリュー先端側に分配混合重視構成を配置する。

 

3.二軸混練押出機のスクリューとは?

同方向二軸押出機の原理を図にしてみた…

ヘタウマ系の絵ですね。

 

同方向二軸押出機の原理

【図1 同方向二軸押出機の原理イメージ】

 

スクリューの構成パーツ

【図2 スクリュー構成パーツのイメージ】

さて、スクリューを構成するパーツについて図を見ながら簡単に見てみよう。

図の左が実際のスクリューパーツの形状で、右側がスクリュー構成図のための記号だ。
記号は、各機械メーカー独自で決めている。

覚えるのが大変ですね。

大丈夫だよ。実際のスクリュー構成図と見比べれば、すぐになれるよ。
上から、ピッチとパーツ長の長い送りパーツだ。送りパーツは、右ねじ(R)だね。

スクリューの先、すなわちダイスに向かって溶融材料を送り出すパーツは右ねじ(R)ですね。

そのとおり。2番目は、ピッチとパーツ長の短い、正(R)リードパーツだ。

ピッチとは、ねじ山間距離ですね。

ここでのルールは、長いパーツは短いパーツの3倍の長さ。
長いパーツは、シリンダー1個分の長さと規定する。

実際の世界では、シリンダー1個当たりのパーツ数は二倍くらいですね。

ここでは、ルールを単純化して楽に学ぶことを優先している。」
次は、基本的なニーディングパーツを目で見て確認だ。

 

ピッチの小さい 正リード、逆リード

【図3 ピッチの小さい 正リード、逆リード】

 

ニーディングパーツの例

【図4 ニーディングパーツの例(実物)】

 

ニーディングパーツの例(記号例)

【図5 ニーディングパーツの例(記号例)】

ニーディングディスクのブレード(羽)の枚数が3枚と5枚のもの、それの右ねじ(R、正)・左ねじ(L、逆)がありますね。

そうなんだ。ニーディングディスクのブレード(羽)の枚数が3枚は、ブレードの厚さがより厚く、5枚だとより薄くなる。

スクリューパターンの実例

▽:KD-3R,△ KD-3L,×:KD-W,>:KD-5R,<KD-5L,○:KD-N

【図6 スクリューパターンの実例】

シリンダー1(C1)からピッチとパーツ長の長い送りパーツ2つ続いて、3枚のニーディングディスク(KD)の正(R)が2つ、XマークはKD-Wつまり図1の一番下の一枚ブレードですね。

そうそう、その調子。
一応、すべて記号と実際のパーツ形状を図を見て確認してね。

(1)スクリューパーツの役割 極めて理論に近い表現

参考文献1を参考に私の経験から述べよう。まずは、分散混合への各パーツの寄与度の比較だ。

《分散混合、分配混合とパーツの役割1》

ルール1→分散混合への寄与度の比較

KD-W>KD-L>KD-R>SC-L>KD-N>SC-R

ブレード 広>狭

次は、分配混合への各パーツの寄与度の比較だ。

《分散混合、分配混合とパーツの役割2》

ルール2→分配混合への寄与度の比較

KD-N>KD-R=KD-L>>SC-R,SC-L,KD-W

ブレード幅  狭>広

最後は、圧の絶対値の各パーツ寄与度比較だ。

《圧の絶対値 パーツごとの比較》

SC-L>KD-L>KD-N≧KD-W

KD-R および SC-R は、圧を立てない。

 

(2)スクリューパーツの役割 感覚的表現

参考文献2を参考に私の経験から述べよう。

職人的ですね!

ブラックボックス的な押出機は、職人的な感覚も捨てがたい。

スクリューパーツの役割←感覚的表現1

リードパーツ
正(R)リードパーツ

ピッチ大→材料供給部(サイドフィードも)やガスを逃がしたい部分で使用

ピッチ小→圧縮したい部分で使用、例えば先端部分やニーディンクディスクの手前。

 


スクリューパーツの役割←感覚的表現2

リードパーツ
ピッチ小、逆(L)リードパーツ


ニーディンクディスクの後ろ(先端側)でバックプレッシャーをかける。

ベント(サイドフィードベント口含む)手前でベントアップ防止や液添容易化のため。

 


スクリューパーツの役割←感覚的表現3

パイナップル

繊維再凝集防止のためスクリュー先端とバキュームの間で使用。

粘度むら防止、低粘度溶融体かき混ぜでスクリュー先端とバキュームの間で使用。

液添直後のかき混ぜで使用。

 

スクリューパーツの役割←感覚的表現4

シールリング

かつては、強混練用にND-R,ND-Lと組み合わせて使用されていた。

→現在、「伸長流動」による「分散」の観点から注目されている。

 

近年、せん断流ではサブミクロンレベルの分散が不可能であることから、伸長流による分散混合が注目されているよ。

各社、様々な伸長流発生のためのスクリューパーツが販売されていますね。

ここから先の詳しいスクリュー設計の話は、セミナーでじっくり説明するね。

 

(アイアール技術者教育研究所  鷲尾 裕之 講師

 


《参考文献》

  1. 大田佳生「二軸押出機の混練要素の考え方」プラスチック成形技術 第13巻 第4,5,6号 短期連載 
  2. 林崎芳博「二軸スクリュー押出機の要素技術と押出成形事例」情報機構

鷲尾講師のセミナー情報はこちら
Pocket

技術セミナー検索


製造業向け技術者教育Eラーニングの講座一覧

 

技術系新入社員研修・新入社員教育サポート

 

在宅勤務対応型のオンライン研修

 

技術者教育の無料相談受付中

スモールステップ・スパイラル型の技術者教育プログラム

資料ダウンロード

講師紹介

技術の超キホン

そうだったのか技術者用語

機械設計マスター

技術者べからず集

工場運営A to Z

生産技術のツボ

技術者のための法律講座

機械製図道場

製造業関連 展示会・イベント情報

公式Facebookページ

スぺシャルコンテンツ
Special Contents

導入・活用事例

テキスト/教材の制作・販売