3分でわかる技術の超キホン フォトクロミック錯体の特徴・用途・可能性(分子スイッチと分子マシン)

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フォトクロミック錯体の解説

フォトクロミック分子の種類とフォトクロミック錯体の特徴

フォトクロミック分子は一種類の光の照射によって、状態(色、形、電子状態等)が変わって、別の光の照射あるいは熱で元の状態に可逆的に戻る分子です。
この現象を示すフォトクロミック化合物は調光材料、光記憶材料、センサーと服装などの応用に期待されて、盛んに研究されます。

フォトクロミック化合物の分子構成から、有機分子、無機分子、錯体分子の三種類に分けられます。

有機フォトクロミック化合物は早い反応速度、容易な分子設計と柔軟性などの利点を持ちますが、その反面、低い耐久性と不安定性は懸念されます。
一方、無機フォトクロミック化合物は優れた安定性と高い製膜のハードルという特徴を併せもちます。フォトクロミック化合物の発見以来150年経った現在、新しい分子の発見はますます難しくなっています。

この背景の下で、安定性に優れた金属部分と、反応が早く柔軟な有機部分を併せもつ「フォトクロミック錯体」の開発が注目されています。
その用途を大別すると、「分子スイッチ」と「分子マシン」があります。
 

フォトクロミック錯体と「分子スイッチ」

光照射により「ON」「OFF」機能を生かし、スイッチング機能をする分子のことです。

分子スイッチ
[図1. 分子スイッチイメージ図]

フォトクロミック分子は光の刺激に応答して色(電子構造および幾何構造)が変化する性質を持っています。

また錯体化することにより、配位子の電子構造・幾何構造の変化が金属に影響を及ぼして、金属特有の機能や反応性が刺激に応答して発現することが期待されます。
 

分子スイッチの用途として、一番考えやすいのは電子伝達の光スイッチです。
光照射により、電子がM1とM2の二つの金属ユニット間の伝達をON/OFFしているスイッチのことです。

蛍光の光スイッチの場合は、一種類の金属で良く、配位子の異性化により、金属部位の蛍光特性をON/OFFします。光でコントロール可能な分子プローブもその一種です。

また、光薬剤化合物として、米国特許文献(US20160251379A1)はフォトクロミック化合物の一つアゾベンゼン誘導体に半金属のホウ素(BF2)を導入して、薬剤の選択的時空間的活性化を提供する光薬剤化合物の形成方法を開示しています(図2)。分子内に医薬品の導入も可能です。
光薬剤化合物
[図2.光薬剤化合物(※上記米国特許文献 US20160251379A1 より Figure2 を引用)]
 

さらに、触媒機能(触媒活性・立体選択性)の光スイッチングも挙げられます。
フォトクロミック分子の幾何構造変化を利用して、金属部位の触媒機能のON/OFFする分子です。

その他、磁性やエネルギー遷移など様々なスイッチング機能を持った分子デバイスの構築に可能性をもたらします。
 

4Dプリンタへの応用は?注目の「分子マシン」

フォトクロミック化合物の光による幾何構造変化を利用する分子マシンも注目されています。

アゾベンゼンを機能物質として高分子と一緒に製膜すると形状記憶材料となります。
4Dプリンターに応用できる見込みがあります(図3)。

これをもとにフォトクロミック化合物を動く「動力部」として利用し、さらに強度の強い金属錯体クラスターと組み合わせる耐久性に優れる分子マシンや、自由回転可能な金属錯体の「支点」とサイズの大きいクラスターの「駆動部」から成る、光駆動分子ペンチ等も考えられるでしょう。

形状記憶材料
[図3.形状記憶材料(※関連する米国特許文献 US20190367692A1 より Figure1 を引用)]
 

様々な応用が期待されるフォトクロミック錯体。今後もその開発動向には要注目ですね。
 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 L・H)
 


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